持続可能なパーム油に関する国際認証のRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)の会員企業およびNGOらは11月19日、マレーシア、クアラルンプールで開催されたRSPOの年次総会の中で、RSPO認証の監査プロセスにおける不正をなくし、認証の信頼性を高めるためのガイドライン作りを求める決議案、"Ensuring Quality, Oversight and Credibility of RSPO Assessments"を賛成多数で可決した。
同決議案を提出したのは英国ロンドンに拠点を置くNPOのFPP(Forest Peoples Programme)で、環境コンサルタンシーのAidenvironment、NPOのSumatran Orangutan Societyが共同署名している。いずれもRSPO会員だ。
なお、同決議は米国の環境調査機関、EIA(Environmental Investigation Agency)が11月16に公表して話題を呼んでいたRSPO認証の不正監査に関する調査報告書、"Who Watches the Watchmen?"を受けてのものだ。
EIAは同報告書の中で、RSPOの監査プロセスにおける深刻な問題点を浮き彫りにした。現状、RSPOはパーム油生産者の監査を完全に外部の監査機関に任せており、生産者が原生林や生態系の破壊、原住民の立ち退き強制などに関わっていないことを保証している。しかし、EIAおよびパートナーのGrassrootsの調査によると、これらの監査機関は多くのケースにおいてパーム油生産者らの持続可能ではない慣行を特定し、軽減することに失敗していることが分かった。
また、EIAは監査機関らがRSPO基準とは程遠いアセスメントを実施しているだけではなく、いくつかの事例においては監査機関がプランテーション企業と結託してRSPO基準の違反を偽装している証拠も見つかったと指摘した。具体的には、先住民の権利を侵害していることを隠ぺいする報告書の作成や、プランテーションにおける人身売買のリスク特定の失敗などが挙げられている。
RSPOは年次総会の中で、EIAが指摘した通り現状の監査プロセスに深刻な問題があることを認めたうえで、その改善に向けて今回の決議案を通過させた形だ。当日は会員の4分の3以上が決議案に賛成票を投じたという。
また、同総会の中では、RSPOの設立に携わったWWF(世界自然保護基金)が、RSPO認証の基準をさらに上回り、自主的に森林破壊ゼロを目指す会員企業らによるイニシアチブ、RSPO Nextの設立を歓迎する声明を公表した。
RSPO認証は多くの企業が自社の持続可能な調達を保証する手段として活用している認証だけに、認証そのものの信頼性を揺るがすEIAによる不正監査の指摘は大きな波紋を広げることになった。今回の決議案が通過したことで、状況は本当に改善の方向へと向かっていくのか。真価が試されるのはこれからだ。
【決議案ダウンロード】Ensuring Quality, Oversight and Credibility of RSPO Assessments
【報告書ダウンロード】Who Watches the Watchmen?
【参照リリース】Dodgy auditors undermine palm oil group’s ‘sustainability’ claims
【団体サイト】Environmental Investigation Agency
【団体サイト】RSPO
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