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【国際】海洋プラスチック廃棄物が生態系と人類に深刻な被害。UNEP報告書

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 国連環境計画(UNEP)は5月23日、同日から27日にかけてケニヤのナイロビで開催された「第2回国連環境総会」(UNEA-2)に先駆け、海洋プラスチック廃棄物の脅威に関する報告書「Marine plastic debris and microplastics」を発表した。プラスチックや微細プラスチック(マイクロプラスチック)が海洋生態系に深刻な被害を与えていると訴えた。

 プラスチックの生産量と廃棄量は毎年継続的に増加しており、その影響は海洋の環境だけでなく、地球環境や社会経済に大きな被害を及ぼしている。プラスチックのゴミは、漂流・漂着ごみの約70%を占めており、特に近年、マイクロプラスチックと呼ばれる長さが5mm以下からナノレベルまでの微細なプラスチックが大きな問題となっている。マイクロプラスチック問題は、2014年にナイロビで開催された「第1回国連環境総会」(UNEA-1)でも指摘されており、各国政府、産業界、NGO等に対して現状の調査や改善策の策定を促していた。また、世界貿易機関(WTO)や有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関する「バーゼル条約」、残留性有機汚染物質(POPs)に関する「ストックホルム条約」、そして「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関する条約(ロッテルダム条約)」の関係者にも対策を呼びかけていた。

 今回の報告書によると、マイクロプラスチックの種類は、化粧用製品を含む比較的小型の個人消費財や、加工前のプラスチック樹脂の小さな塊、そして元々は大きな製品だったものが海中で浮遊する内に微細化したものとがあるという。マイクロプラスチックには、ポリ塩化ビフェニル化合物(PCB)や殺虫効果をもつ塩化ジフェニルエタン系化合物(DDT)等の有害物質が含まれていることが多く、それらが海中の様々な生物や物質と化学反応を起こすことで、より毒性が強くなる恐れがあること警鐘を鳴らしている。存在する場所としては海上、河口付近、海岸、海底等が挙げられている。

 プラスチックとマイクロプラスチックの問題は、2011年3月にホノルルで開催された「第5回国際海洋ゴミ会議」でも重要課題として採り上げられ、「ホノルル戦略」として取り組みが呼びかけれてきた。今回公表された報告書の中でも、各国での研究の内、アメリカのメイン州沖とフロリダ州沖の潮下帯海域、インドの船舶解体現場、シンガポールのマングローブ、イギリスの河口域、スウェーデンとイタリアの潮下帯海域、ベルギーの港湾、北大西洋の深海海溝、地中海の深海渓谷等を対象とした調査結果が事例として挙げられ、逼迫した状況にあることが科学的なデータを基に指摘されている。この問題は、国連の「持続可能な発展目標(SDGs)」にも組み込まれて、一部の関係者の間では注目を集めていたが、現在に至るまで抜本的な対策がなされているとは言えない。

 プラスチックとマイクロプラスチックによる魚介類への影響は、それを摂取する人間にも直接的な健康被害を及ぼしうる。製品によっては海中でクジラやアザラシ等を傷つけたり海鳥が呑み込んで窒息したりする等の被害も報告されている。また「ホノルル戦略」の関連文書によると、経済的側面ではゴミ処理のための多大な費用、漁船のエンジン部分や漁網へのごみの付着による損失、そして海岸のごみ散乱による観光への影響等も指摘されている。

 マイクロプラスチック問題の元となる海洋ゴミの削減に成果を出している取り組みの一つとしてUNEPが紹介しているのは、フランスに本社のある環境計測機器メーカー、KIMO社が主導している取り組み「Fishing for litter」だ。この取り組みでは、毎年20,000トンのごみが海へ廃棄されている北海沿岸のオランダやスコットランドが舞台。直接的に漁業関係者を巻き込み、KIMO社がボートとごみ回収用の大きな袋を用意、漁船員のボランティアが洋上のゴミを詰め込み、波止場に運んで処理している。ゴミの減量だけでなく、ゴミへの意識改革を促すのに効果があるという。

 改善策としてUNEPが指摘しているのは、当面の対策としてゴミ処理や管理の仕方の改善を図ることが必要だが、より長期的な視点からは、我々がプラスチックに対する考え方を変え、安易な使用と廃棄を止めることが求められる。英国では、ウェールズ、北アイルランド、スコットランドに続き、イングランドでも2015年10月からレジ袋が有料化され、5ペンス(8~9円)は税金として環境・食料・農村地域省に収められ、環境整備等の予算となっている。日本でも大手スーパーでの有料化が進んでいるが、コンビニエンスストアやデパート、そして通販でのプラスチック袋の使い方の問題、過剰包装の問題などに、政府や業界全体での取り組んでほしい。

【参照ページ】Plastic and Microplastics in our Oceans – A Serious Environmental Threat
【報告書ページ】Marine Plastic Debris and Microplastic Technical Report Advance Copy Annex
【参考ページ】Honolulu Strategy
【参考ページ】KIMO Fishing for litter

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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