石油・ガス世界大手10社で構成する石油・ガス気候変動イニシアチブ(OGCI)は11月4日、石油・ガス産業からの二酸化炭素排出量を削減するための技術開発のため投資ファンド「OGCI Climate Investments」を共同設立することを発表した。ファンド規模は10億米ドル(約1,100億円)。OGCIは2014年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)で構想が発表され、同年9月の国連気候変動サミットで正式に発足した組織。BP(英国)、Eni(イタリア)、レプソル(スペイン)、サウジアラムコ(サウジアラビア)、ロイヤル・ダッチ・シェル(英国・オランダ)、スタトイル(ノルウェー)、トタル(フランス)、ペメックス(メキシコ)、リライアンス(インド)、中国石油天然気集団(中国)の10社が加盟している。米国大手は入っていない。ファンド設立発表式には、BP、Eni、レプソル、サウジアラムコ、ロイヤル・ダッチ・シェル、スタトイル、トタルの7社のCEOまたは会長が直接参加し、調印を行った。
設立されたファンドが投資対象とするのは4つの分野で、そのうち特に2分野に注力する。一つ目は、低炭素社会に向けて天然ガス・サプライチェーンからのメタンガス漏洩量・排出量を削減し天然ガスを気候変動に資するものにすること。もう一つは、炭素回収・貯蔵(CCS)技術を発展させた新概念「炭素回収・使用・貯蔵(CCUS)」技術の開発を支援し低炭素社会でも石油・ガスを推進できるようにすること。その他二つは、工業分野でのエネルギー効率改善と交通分野でのエネルギー効率改善。
今回のファンド設立の背後には、気候変動への関心が高まる中、石油・ガス産業の戦略的な狙いがある。目下のところ、低炭素社会に向けては、二酸化炭素排出量が多く、大気汚染物質も多い石炭を減少することで、世界(日本を除く)は大方のところ見解一致しているが、石油とガスについては、意見が二つに分かれている。低炭素社会に向けた最大限の努力を模索する支持者は、石油とガスを含めた削減と再生可能エネルギー推進を呼びかけているが、一方で急速な脱化石燃料を望まない再生可能エネルギー懐疑派からは、石炭から石油・ガスへのエネルギーシフトを提言している。石油・ガス産業大手の多くは、世界的にエネルギー需要が増加する中、石油・ガスは引き続き世界の主要エネルギー源となると考えており、脱石油・ガスではなく、石油・ガス産業でのエネルギー効率を上げる取組を推進している。
OGCIは、気候変動枠組条約COP21パリ会議が開催される直前の昨年10月にも、石油・ガスのエネルギー効率改善に向けた共同声明を発表している。声明ではCOP21での政府合意や2℃目標を支持するとともに、エネルギー改善やCCS技術開発のための投資やアクションを行っていくことを宣言していた。
一方、米国の石油・ガス大手であるエクソンモービルやシェブロンは、OGCIに加盟することを渋っている。石油・ガスの低炭素化では、米国とそれ以外で温度間に差が出てきている。
【参照ページ】OGCI announces $1 billion investment in low emissions technologies
【参照ページ】CEO Declaration: Accelerating a low emissions future
【参照ページ】Oil and gas CEOs jointly declare action on climate change
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