保険世界大手仏アクサは12月12日、同社の気候変動対応コミットメントを強化したと発表した。石炭関連企業ダイベストメントの対象を大幅に拡大し、ダイベストメント額を24億ユーロ(約3,200億円)に5倍に引き上げる。オイルサンド事業からのダイベストメントも実施。さらに、石炭火力発電プロジェクトとオイルサンド事業への保険サービスも停止する。一方、グリーンボンド等への投資を2020年までに120億ユーロ(約1.6兆円)と現状に4倍に拡大する。
石炭関連企業ダイベストメント拡大では、アクサはすでに2年前から、売上の50%以上を石炭関連事業が占める企業からの投融資撤退(ダイベストメント)を実施しているが、今回(1)売上に占める石炭採掘事業の割合が30%以上を占める企業、(2)売上に占める石炭火力発電の割合が30%以上を占める企業、(3)設備容量合計3GW以上の石炭火力発電建設を計画する企業、(4)年間2,000万t以上の石炭を生産する企業を対象に加える。しかし、石炭火力発電が30%以上50%未満ですでに低炭素経済への移行計画を進めている電力会社等は、特例としてダイベストメントから除外する。
これら石炭ダイベストメントでは、国際環境NGO独Urgewaldが今年11月に公表した石炭関連世界約800社のデータベース「Global Coal Exit List」を活用し、対象企業を抽出した。新たなダイベストメント対象企業としてすでに113社が選定されており、除外適用された企業はわずか6社。同データベースを作成したUrgewaldは、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、Friends of the Earth(FoE)フランスとともに、アクサの発表基準により対象となると考えられる企業を割り出した。そのリストには、米デューク・エナジー、チェコ石炭採掘CEZ、独エネルギー大手ユニパー、独エネルギー大手RWE、スイスのグレンコア、豪アングロ・アメリカン、韓国電力公社、丸紅等の名がある。さらに、東京電力、中部電力も対象となる可能性があると指摘している。アクサの新基準を「Global Coal Exit List」にそのまま照合すると、日本企業は約20社が基準に引っかかる。
また、アクサ運用子会社アクサ・インベストメント・マネージャーズは、2018年1月までに同社のオープンエンド型責任投資ファンドにもアクサと同様のダイベストメントを実施する。加えて、投資顧問サービスの委託元のアセットオーナーにも同様の提案をしていく。
オイルサンド事業からだのダイベストメントでは、保有する石油埋蔵量に占めるオイルサンドの割合が30%以上の企業が対象となる。この基準では、オイルサンド生産事業者13社とパイプライン事業者7社からのダイベストメントが実施される。
保険サービスの提供停止対象は、石炭火力発電所の新設を行う企業と、休止している炭鉱や石炭火力発電を再稼働させる企業。一方、電力が乏しくライフライン維持が困難な国は停止対象から除外する。また、二酸化炭素排出削減技術の導入を促すため既存の石炭火力発電所の修繕に関与する企業も停止対象から除外する。
グリーン投資の拡大では、アクサは2015年、2020年までに30億ユーロ(約4,000億円)のグリーン投資をコミットしたが、すでに目標を達成。そのため今回目標投資金額を120億ユーロ(約1.6兆円)に4倍に増やした。これは気候変動枠組み条約パリ会議(COP21)で、当時のクリスティアーナ・フィゲレス国連気候変動枠組み条約事務局長が機関投資家に呼びかけた「運用資産の1%以上をグリーンに」を、大きく上回る水準。投資対象は、再生可能エネルギー等の環境インフラ、グリーンボンド、グリーンビルディングで、選定基準には気候債券イニシアチブ(CBI)を用いる。この目標で、2020年までに二酸化炭素排出量を年間400万t減らす。
他にも、国際金融公社(IFC)との間で、新興国の気候変動対応インフラプロジェクトに5億米ドルを投資するファンドを設立するパートナーシップを締結。太平洋諸国の政府に対する巨大災害リスク保険を提供するPacific Catastrophe Risk Insurance Company(PCRIC)に対し、同社子会社AXA Global Parametricsが再保険を提供する。
【参照ページ】AXA accelerates its commitment to fight climate change 【参照ページ】A new climate ambition 【参照ページ】Analysis of AXA’s 12th December commitment on divestment and underwriting