英国財務報告評議会(FRC)は12月5日、英国コーポレートガバナンス・コードの改定版原案を公表した。英国のEU離脱が迫る中、EU離脱後も海外から投資を促進するために、企業のガバナンスを正し持続可能な成長への基盤を固め、市場・企業への信用を醸成していく。FRCは2018年2月末までパブリックコメントを受け付け、6月に発行する予定。
改定版は、現行版に比べてより完結かつ端的な表現となっている。特に、ガバナンス強化に果たす企業文化の価値に重点を置いている点が新しい。また、英国政府が2016年11月に発表した英国がバナンス改革の方針の提言内容も反映された。企業が具体的に取るべきアクションも列挙し、ガバナンス改革の実効性を高める。
【参考】【イギリス】政府、コーポレートガバナンス改革案を発表。役員と従業員の給与格差是正が大きな焦点(2017年9月16日)
改定版は、原則1の始めで、取締役会は、企業の長期的で持続可能な成功を促進し、株主価値を生成し、広く社会に貢献することと言及。取締役会が大きなリーダーシップを発揮する意義を高く掲げた。そのため、役員報酬や役員賞与の方針や決定では、報酬委員会に広い独立的な意思決定機能と広い裁量を与えることを定めた。また、株主からの反対意見に対しては、具体的な行動案を提示することも盛り込み、株主による企業監視機能を高めた。
英国のコーポレートガバナンス・コードは、取締役会議長の独立性を強調しており、以前から社外取締役が議長を務めるよう求めている。今回の改定ではこの規定をさらに進め、社外取締役を9年以上務めるものは社外取締役とみなされなくなるという規定を追加した。これにより議長着任前も含め9年以上社外取締役を務める議長は、議長としての適格性を満たさなくなる。現在、この規定に抵触する英国上場企業は67社あり、そのうち19社はFTSE100採用企業。
また取締役の長期経営を促進するため、企業の長期的成長と連動し付与される株式支給型ボーナスは、支給後5年以上は売却すべきでないとの規定も盛り込んだ。また取締役会の多様性を高めるため、取締役任命時には性別だけでなく、社会バックグランド、民族バックグラウンド等も考慮するよう求めた。
英国では経営陣と従業員の格差も課題として扱われており、今回の改定では対策として、従業員の声を取締役会に反映させる仕組みづくりが導入された。仕組みの例として、従業員代表の取締役の任命、公式な従業員諮問会議の設置、従業員担当の社外取締役の任命を挙げた。これらの仕組みは、従業員が匿名のまま懸念事項を取締役会に伝えられる手段として機能しなければならないと言及した。また従業員エンゲージメントの結果をアニュアルレポートの中で明記することも求めた。
同コードは成立後、英国の全上場企業を対象とし、2019年1月1日に開始する会計年度から「Comply or Explain」原則の下で適用される。2016年制定の現行コーポレートガバナンス・コードまでは上場企業でも小規模の企業約450社は適用の対象外だったが、今回全ての上場企業に対象が拡大された。
【参照ページ】A sharper UK Corporate Governance Code to achieve long-term success and trust in business
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