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【日本】電中研、2050年政府目標達成には原発29GW以上必要と算出。結論には疑問も

 電力中央研究所の社会経済研究所は4月12日、2016年3月に日本政府が閣議決定した地球温暖化対策計画で打ち出した長期目標「2050年までに二酸化炭素排出量を2013年比80%削減」を実現するためには、29GWの原子力発電設備容量が必要になると指摘。既存発電17GWの再稼働に加え、設置許可未申請5GWの他、7GWの新増設が不可欠との見方を提言した。残された時間は少ないとし、政府に早急な原発再稼働と増設実施を求めた。

 電力中央研究所は、大手電力会社9社が1951年に合同で設立した一般社団法人。今回の分析ではまず、長期の電力需要予測から始めた。2013年から2030年までの経済成長率は、2015年時の経済産業省の想定の年率1.7%。2030年から2050年までは年率0.5%と仮定した。その上で、2050年までに省エネによる電力需要抑制によって二酸化炭素排出量を80%削減するためには、2050年には日本全体の二酸化炭素排出量は2.47億tまで減らす必要がある。内訳は電力が6,500万tで輸送等の他のエネルギー由来が1.82億tと推計した。

 この時点で、現在と同じ電源構成だとしても二酸化炭素排出量は80%削減できているのだが、さらに分析では社会的制約から電源構成でもゼロエミッション電源を中心に、6,500万tの二酸化炭素排出量で必要電力需要を賄えるかを試算した。再生可能エネルギーについては、環境省や同研究所の尾羽氏等が算出したポテンシャル上限の数値を用いた。その結果、太陽光発電は356GW、風力75GW(陸上風力24.8GW、洋上風力50.2GW)とした。また、水力・バイオマス・地熱は、国際エネルギー機関(IEA)の「持続可能発展シナリオ(SDS)」を用いて、合計59GWとした。さらにバッテリーが市場競争力があるまで下がったと仮定し、大量導入されるとし216GWと置いた。その上で、揚水発電26GW、天然ガス火力発電67GWとしても、原子力発電は29GW必要とし算出した。

 一方、仮に原子力発電所を既存発電17GWの再稼働にだけに抑えた場合に、二酸化炭素排出量80%削減目標を炭素回収・貯蔵(CCU)や炭素回収・利用(CCU)で実現した場合には、鉄鋼や化学、窯業・土石といった素材系産業からの二酸化炭素排出量の約3分の1に相当する3,000万tを2050年に回収しなければならず、CCS・CCUの価格競争力が十分にならなければ産業競争力上リスクがあるとした。そのため、やはり原子力発電の未申請案件の推進と新増設が不可欠とした。

 今回の分析では、再生可能エネルギー電力をポテンシャル量限界まで最大限活用し、バッテリーのコストも下がり最大に活用でき、現在九州電力等が実施している再生可能エネルギー発電事業者への出力制御もない前提で、結果を算出したという。しかし、不可解な点もある。風力発電については陸上風力は環境省のデータを用いて最大ポテンシャルが24.8GWとしたものの、洋上風力発電については、日本風力発電協会が掲げている風力発電全体目標75GWから逆算しており必ずしも最大ポテンシャルとはなっていない。またこの日本風力発電協会75GWは、現在の大手電力事業者の設備容量全体の50%を超えないという制約を設けて立てられており、必ずしも真のポテンシャル上限とは言えない。地熱についても、SDSを用いているが、SDSが最大ポテンシャルを示しているわけはない。

 さらに、今回の分析では、省エネで二酸化炭素排出量を80%削減させた状態から、さらに電源構成をゼロエミッション電源を中心に切り替えているため、最終的な二酸化炭素排出量は80%を遥かに超える削減となるシナリオとなっている。今以上に石炭火力発電を削減しなければいけない国際社会圧力があることを前提にしたとしても、今回想定している省エネ年率よりは多少緩やかでも二酸化炭素排出量80%削減は実現できる。

 このように、今回、電力中央研究所がはじき出した結論には再考の余地がある。

【参照ページ】2050年のCO2大規模削減を実現するための経済およびエネルギー・電力需給の定量分析
【レポート】2050年のCO2大規模削減を実現するための経済およびエネルギー・電力需要の定量分析
【参照ページ】風力発電導入ポテンシャルと中長期導入目標 v4.3

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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