仏ESG投資コンサルティング大手Novethicは11月28日、仏エネルギー転換法173条に基づく、大手機関投資家の気候関連情報開示の状況を分析したレポートを発表した。同レポートは今年で3年目。大手機関投資家で投資ポートフォリオの気候変動リスクに関する情報開示が進む一方、中規模の機関投資家では法定の情報開示を怠っていることがわかった。
【参考】【戦略】フランス「エネルギー転換法」の内容 〜原発削減、気候変動情報開示、プラスチック製品・売れ残り食品廃棄禁止〜(2016年10月2日)
同法は、運用資産が5億ユーロ(約600億円)以上の機関投資家に対し、気候変動リスクに関する情報を「Comply or explain」原則に基づきアニュアルレポートの中で開示することを義務化。2016年1月を含む会計年度のアニュアルレポート発行から適用された。今回の分析では、そのうち運用資産額上位100機関を対象とした。
100機関のうち、すでに気候関連情報開示を行っているのは72機関。運用資産合計では2.3兆ユーロ(約250兆円)。一方、28機関は開示していなかった。
72機関のうち、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を活用したと言及したのは、18機関。活用の状況では、経営陣の役割、リスク・機会の特定、リスク・機会の事業へのインパクト、リスクマネジメント・プロセス、活用指標、スコープ1・2・3については、60%以上の機関が十分に準拠できていたが、シナリオ分析については完全準拠が39%と低く、部分準拠を入れても83%だった。
ポートフォリオのカーボンフットプリントの測定では、72機関の合計で、測定された運用資産は68%となり、前年より10ポイント増加。測定されたアセットクラスでは、株式、社債は概ねカバーされてきたが、国債は中程度、不動産、インフラが低い。但し、発行体のスコープ3の排出量まで見に行っていると言及した機関投資家は18機関にとどまった。
カーボンフットプリント算出結果の活用についても、戦略に違いがみられた。カーボンフットプリント削減目標を掲げていた25機関のうち、銘柄選定による削減を打ち出したのは18機関。ポートフォリオ総排出量での排出絶対量での削減目標を設定していたのは9機関。将来のカーボンニュートラルを宣言したのは2機関だった。複数の戦略を採用している機関があるため、データには重複がある。
また、カーボンフットプリントの算出手法についても進化が見られた。単純な排出量計算ではなく、移行リスク全体をスコア化した管理を導入したのは15機関。投資先企業の化石燃料埋蔵量を測定していたのところも7機関あった。
石炭採掘や石炭火力発電への投資引揚げ(ダイベストメント)では、全面禁止しているのは、大手機関投資家を中心に21機関。ケース・バイ・ケース判断が2機関で、投資速度ダウンが9機関あった。前年よりも全面禁止が大幅に増えた。原油・ガスでも、ダイベストメント実施機関が前年の2機関から6機関に増加。2019年中に開始予定を入れると8機関となった。
【参照ページ】«173 SHADES OF REPORTING» SEASON III FOCUSES ON CLIMATE
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