国連責任投資原則(PRI)のフィオナ・レイノルズCEOは9月3日、ESG投資が主流化する中、新型コロナウイルス・パンデミックで同トレンドが加速したとの分析結果を発表した。
同氏はまず直近3年、ESG投資の哲学と慣行の主流化と成熟が大幅に加速したと言及。純粋なリスクとリターンの観点から、投資家の役割を考えることに焦点が当てられるようになったという。また、ESG投資は単なるコスト増ではなく、リターンを創出し、将来を保証する投資が可能になると強調。現在進行中の新型コロナウイルス・パンデミックは、ESG投資のレジリエンスの高さを証明し、ESG投資トレンドの一助になったとした。
例えば、金融情報世界大手米モーニングスターによると、2020年上期に米国ESGファンドへの純資産流入額は210億米ドル(約2.2兆円)で、過去の4倍を記録した2019年の年間合計に相当するまでに拡大。ESGインデックス57種のうち51種は、第1四半期にその他の非ESGインデックスのパフォーマンスを上回った。MSCIでも、17種中15種が同様の結果になったと報告した。
また、投資運用世界大手米ブラックロックのデータでは、ESGファンドの88%は、2020年1月1日から4月30日までの期間に、非ESGファンドのパフォーマンスを上回ったという。新型コロナウイルス・パンデミック初期には、ESGが端へ追いやられる懸念もあったものの、実態としては加速が強まった。
PRIの署名機関数は3,000以上で、運用資産残高(AUM)は100兆米ドル(約1京円)を超える。PRIは署名機関に対し、新型コロナウイルスが短期・長期で投資家に与えた影響に関する調査を実施。社会問題、気候変動、スチュワードシップ、新興市場、回復について、22の質問を行った。
回答者の半数強は、投資先企業に対し、年次総会シーズン中に新型コロナウイルス関連の課題に関するエンゲージメントを行ったと回答。回答者の63%は、同エンゲージメントを行う計画があるとした。機関投資は、こうした動きが今後2年から3年は日常業務に影響が及ぶと予測している。
また、同調査では社会問題の重要性の高まりが明らかになったという。回答者の64%は、新型コロナウイルスにより、まだ優先事項としていなかった社会課題(S)に焦点が当たったと回答。具体的には、労働安全衛生、社会的セーフティネット、労働者保護、責任ある調達慣行、サプライチェーン課題、プライバシーを含むダイバーシティやデジタル権利等。
さらに、パンデミックによる取り組みの変化については、71%が課題対応のための投資家間の協働強化、33%が政府へのエンゲージメントと回答した。パンデミック後の社会課題については、人権、メンタルヘルス、医療へのアクセス、公共交通機関等が優先対応事項として挙がった。
一方、社会課題への意識の高まりは、環境への注力や進捗を犠牲にするわけではない。回答者の79%は、新型コロナウイルスからの回復期を、2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロに向けた目標を高め、パリ協定に則した対応を強化する機会だと認識。57%は、パンデミックにより、エネルギー政策改革や、再生可能エネルギーの機会となる構造変化が加速したと捉えている。
プライベートエクイティ投資家の間では、最も重要な機会がある分野については「エネルギー」という回答が多かった。製造、金融、通信サービス、電力、素材、消費財、不動産の回答は、それほど多くなかったと分析した。
グローバル投資家に対しては、現在の潮流を活かし、グリーン、インクルーシブ、サステナブルなリカバリーを推進してくべきと伝えた。
【参照ページ】COVID-19 accelerates ESG trends, global investors confirm
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