世界経済フォーラム(WEF)の「サーキュラー・カー・イニシアチブ(CCI)」は12月17日、自動車車体のサーキュラーエコノミー化に向けた調査・展望内容をまとめたレポートを発表した。自動車業界は、自動車のEV・FCV化だけでなく、車体生産でのスコープ3の排出量削減でも動く。
CCIは、2020年1月のダボス会議で発足。参加企業は、BMW、フォルクスワーゲン、ルノー、ボルボ、ダイムラー、アウディ、アルセロール・ミタル、ユミコア、ミシュラン、NEXUS Automotive International、ソルベイ、マイクロソフト、国際エネルギー機関(IEA)、国連欧州経済委員会(UNECE)、世界自然保護基金(WWF)、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)、FreeNow、国際資源パネル(IRP)、Climate-KIC、コロンビア大学等。日本では、本田技研工業とブリヂストンが参加している。
(出所)WEF
CCIの分析によると、従来型の内燃機関自動車をEV・FCV化すると、使用時の二酸化炭素排出量は削減できるが、車体生産や廃棄での二酸化炭素排出量はむしろ多少増える。そのため、自動車業界全体の二酸化炭素排出量を大幅に削減するためには、車体そのもののサーキュラーエコノミー化が不可欠と位置づけている。試算によると、サーキュラーエコノミー化することで、ライフサイクルでの排出量を98%減らせるという。
CCIは発足から1年間、同時並行でプロジェクトの作業を進めており、今回の報告書「The Road Ahead: A policy research agenda for automotive circularity」がその第1弾の成果物となる。チームを率いたのは、WBCSDとSystemiqで、車体のサーキュラーエコノミー化を促進するために必要となる法規制を整理した。特にバッテリー、アルミニウム、鉄については詳述した。地域毎でもEU、中国、米国での規制の特徴を分析。日本は対象とならなかった。
他にも、アクセンチュアが主導するチームが、車体パーツの原材料の利用効率や使用時の効率を向上するための将来フレームワークに関する検討を行っており、第2弾報告書「Raising Ambitions: A new roadmap for the circular automotive economy」という形で、2021年1月に発行予定。特に、高品質のリサイクルと、バッテリーの再目的化について議論を深めている。
3つ目のチームは、マッキンゼーが率いるチームで、自動車部品素材の脱炭素化に向け、必要となるテクノロジーの特定とコスト分析を実施中。こちらの報告書も2021年1月に発行される予定。
CCIは、これまでの検討を通じて、2050年までに乗用車需要が今より2倍に増加し、生活水準も下げずに維持したまま、消費する天然資源を80%以上削減し、乗客当たりの原単位の二酸化炭素排出量75%削減できると見通している。MaaSビジネスモデルや、データ活用についても、CCIでの検討の対象となっている。
CCIは今回、率先して動いている自動車メーカーとしてルノーを紹介。古くなっていた仏フランの同社工場を改修し、サーキュラーエコノミー化に特化した事業ユニットを創設。3,000人の雇用を創出しながら、2030年までにカーボン・ネガティブを実現する計画を今年秋に発表した。
【参照ページ】The circular economy could forever change how cars are made – here’s how
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