国連責任投資原則(PRI)は2月2日、日本向けに、2050年二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を実現するための要請政策をまとめたレポートを発表した。PRIは、地域別に政策ペーパーを出しており、中国、米国に続き、日本が3カ国目。
PRIは、2019年に気候変動に関する新シナリオを策定したレポート「Inevitable Policy Response(IPR)」を発表しており、今回の日本向けのレポートも、IPRを作成したプロジェクトチームが作成を担当した。
【参考】【国際】PRI、新たな気候変動シナリオレポート「IPR」発表。NPSを代替。投資家に参照呼びかけ(2019年9月17日)
まず、政策全体としては、2050年までの具体的なロードマップの作成、2030年までの中間目標の設定、新政策の法制化を要請。政策決定のための経済インパクトの包括的な分析も必要とした。また、産業政策を低減するための、政府機関から独立した専門家諮問会議の設立した上で、同会議の提言に関し、政府機関は公式な回答を義務付けることも要請した。また2050年カーボンニュートラルと整合性のあるカーボンプライシング制度の導入も要請。カーボンプライシングでは、電力・エネルギーと工業は適用必須で、輸送・交通や建設・不動産にも適用することが望ましいとした。
電力政策では、2050年までの電力の脱炭素化に向けた明確な計画と、2050年目標と整合性のある2030年までの太陽光発電・風力発電の導入計画を作成するよう要請。送配電でも、再生可能エネルギーの発電を中止させるような送配電ルールを見直すよう求めた。さらに再生可能エネルギーの電源地域と、電力の需要地域をつなぐ高圧系統を整備することを要請。石炭火力発電については、着工前だけでなく建設着工後でも初期フェーズのものも含めて全て廃止することや、CCUSに用いられる炭素回収装置が付いていない石炭火力発電を全廃するための中間目標も定めることも要請した。
工業では、水素基本戦略を策定し、鉄鋼、化学、セメントについての低炭素化戦略の策定と実装を要請。2050年までに二酸化炭素排出量の多い産業の脱炭素化目標を掲げ、整合性のある電力、水素、CCS技術開発のロードマップも提示するよう求めた。工場でのエネルギー消費量を毎年1%から2%、できれば2%以上削減することを義務化する政策の実行可能性を検証することも求めた。
交通・輸送では、2035年までにガソリン・ディーゼル車の販売を全廃する政策の策定・実装することを要請。全廃対象には、ハイブリッド車(HV)も含められたが、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)は全廃の対象外。特に乗用車については、2035年までにゼロ・エミッション100%を達成するよう求めた。一方、トラック・バスに関しては2050年までに脱炭素化するための水素戦略を策定することを求めた。
建設・不動産では、既存物件での省エネポテンシャルの算出と、現行の補助金スキームに加え、修繕に関する財務インセンティブ政策を策定した上で、2050年までに全物件での省エネ修繕を完了するよう求めた。
【参照ページ】DELIVERING NET ZERO EMISSIONS IN JAPAN
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