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【EU】欧州委、「サステナブル製品イニシアチブ」発表。消費者訴求や製品規格のルール刷新へ

 欧州委員会は3月30日、EU域内での製品のサステナビリティを大幅に高め、流通を促進する政策「サステナブル製品イニシアチブ」を採択した。関連法規制等の改正に向けて動き出す。

 今回の政策は、欧州委員会が2019年12月に採択した「欧州グリーンディール政策」や、2020年3月に採択した「サーキュラーエコノミー・アクションプラン」を具現化するためのもの。サステナブルな製品を消費者が購入しやすくする一連の政策と、アパレル及び建設分野を含めたエコデザインルールの改正が柱となっている。

【参考】【戦略】EU欧州委が定めた「欧州グリーンディール政策」の内容。〜9つの政策骨子を詳細解説〜(2019年12月12日)
【参考】【EU】欧州委、サーキュラーエコノミー・アクションプラン発表。2021年までに各分野の法制化検討(2020年3月13日)

 まず、消費者向け施策では、今回、消費者権利指令の改正案も同時に発表した。消費者保護のテーマを「安全・安心」から「サステナビリティ」へと方向性を大きく拡大。消費者が真に環境フットプリントを考慮した選択をできるようにする。

 今回の法改正は、欧州委員会が2020年3月に発表した「サーキュラーエコノミー・アクションプラン」を具現化するための措置の一環。製品の修理権や耐久性の高い製品の購入権利を保護する他、エコラベル表示でも信頼性を高める。特に「グリーンウォッシュ」の防止に力を入れる。内容を検討する過程では、欧州委員会は、1万2,000人以上の消費者、企業、消費者専門家、各国当局と協議を実施した。

 同EU指令では、まず、消費者権利指令を改正し、耐久性と修理権の保護を企業に義務付ける。具体的には、耐久性に関しては、2年以上の耐久性を保証している製品を販売する場合、企業が消費者に当該情報がわかるようにすることを義務化。特に、エネルギー関連製品については、耐久性保証がない場合にもその旨を消費者に通知しなければならなくなる。

 また修理権では、販売企業は、修理に関する情報を消費者に提供することが義務化される。具体的には、修理可能性スコア、スペアパーツや修理マニュアルの入手可能性等が含まれ、メーカー側の情報も対象となる。スマートデバイス、デジタルコンテンツ、サービスについては、生産者が提供するソフトウェアのアップデート情報についても消費者に通知しなければならない。

 他にも、不公正商行為指令(UCPD)を改正し、販売企業が消費者に対し誤認させることを禁止する対象項目を拡大し、環境や社会への影響、耐久性や修理可能性等も対象とする。また、エコラベル等で、明確かつ客観的で検証可能なコミットメントや目標がなく、独立監査制度もない表示で訴求することも取り締まり対象となる。判定はケースバイケースで行われる。

 さらにUCPD上の具体的な禁止事項として、以下の行為を追加する。

  • 耐久性を制限するために導入された機能の消費者への不通知(例えば、特定期間後に商品の機能を停止またはダウングレードするソフトウェア)
  • 明確に実証基準がないまま「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」等を製品や企業に対し謳う行為
  • 製品の特定の側面のみに該当するにもにもかかわらず、製品全体について環境訴求を行う行為
  • 第三者検証スキームや公的機関の制度に基づかない自主的なサステナビリティラベルの表示
  • 正規品以外の消耗品、スペアパーツ、付属品を使用した場合に当該製品の機能が制限されることを告知しない行為

 欧州委員会は今後、欧州議会及びEU理事会との政策調整に入る。最終的にEU指令が成立し、国内法化されれば、消費者は代表訴訟指令に基づく集団救済手続を含め、違反があった場合に救済を受ける権利を有するようになる。同政策は、現在パブリックコメント募集中の「グリーン訴求実証イニシアチブ」「修理権イニシアチブ」によっても補完される。

 サステナブル製品イニシアチブのもう一つの柱となっているエコデザインルールの改正では、サーキュラーエコノミー化に重点を置く。まず、新たに「サステナブル製品のためのエコデザイン規則」の成立を目指し、今回、案を発表した。いずれも業界を変革することで、グローバル競争力を高められると説明した。

 従来のEUのエコデザイン規則では、省エネ観点だけが要件だったが、新たに、製品のライフサイクル全体での環境フットプリントの80%を対象とし、耐久性、信頼性、再利用性、アップグレード性、修理性、メンテナンス、改修、リサイクルが容易で、エネルギーや資源の効率的な製品を作るための新たな要件を設定。その上で、当該情報を「デジタル製品パスポート」により消費者がいつでもアクセスできるようにする。売れ残った製品の破棄を廃止する措置や、グリーン公共調達の拡大、サステナブル製品へのインセンティブの付与も内容に盛り込まれた。

 今回同時に、スマートフォン、タブレット端末、太陽光発電パネル等の電気製品に関しては、新規則が発効するまでの移行措置として、「エコデザインおよびエネルギー表示作業計画2022-2024」も採択。現行法の範囲で、先行して制度導入を図る。欧州委員会は、既存のエコデザイン規則により、2021年だけで消費者は1,200億ユーロをコスト削減につながったと強調。対象製品の年間エネルギー消費量も10%削減されたという。また、新規則では、2030年までに、132M石油換算tの一次エネルギーの削減につながり、これはEUのロシア産ガスの輸入量にほぼ匹敵すると伝えた。

 また別途、アパレルと建設の各業界では、サーキュラーエコノミー化を進めるための特別政策も示した。まず、アパレルでは、「持続可能でサーキュラーなアパレルのためのEU戦略」を示し2030年のゴールを定めた。具体的には、2030年までに、EU市場に投入される繊維製品を、長寿命でリサイクル可能、可能な限り再生繊維を使用、有害物質を含まず、社会的権利と環境を尊重して生産されるようにする。そのため、エコデザイン要件やデジタル製品パスポートの制度を活用するとともに、拡大生産者責任制度も適用する考え。マイクロプラスチック対策も含まれる。

 アパレルに関しては、新型コロナウイルス・パンデミックで業界全体が大きな経済打撃を受けていることも考慮し、移行期間を積極的に資金支援する考え。これにより、業界の回復と転換を支える。

 建設分野では、建設資材規則を改正し、建設製品や建設資材の設計と生産が、耐久性、修理性、リサイクル性、再製造の容易性を高めるために、最先端の技術に基づいていることを確保する。欧州共通規格でサステナビリティを大きく向上させるとともに、デジタル製品パスポートも活用する。特に中小企業の管理費用負担を軽減するため、デジタルソリューションも提供していく。

【参照ページ】Green Deal: New proposals to make sustainable products the norm and boost Europe's resource independence
【参照ページ】Circular Economy: Commission proposes new consumer rights and a ban on greenwashing

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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