米バイデン政権は6月9日、電気自動車(EV)充電スタンドを米高速道路や地域社会に合計50万台設置する政策を発表した。これに基づき、エネルギー省と運輸省が、協働でEVスタンドの設置規格も示した。コスト削減、高収入の雇用創出、気候変動対策の3つで同時に成果を上げにいく。
米大統領府(ホワイトハウス)は今回、バイデン大統領のリーダーシップで、2021年に就任から、EVの販売台数は倍増し、現在EVが200万台以上、EV充電スタンド10万台以上が稼働していると強調。さらに、インフラ投資・雇用法で確保したEV充電インフラ普及予算75億米ドル(約1兆円)を効果的に活用し、50万台設置へとつなげる。
75億米ドルの予算の内訳は、2つのプログラムで構成されている。まず、国家EVインフラ(NEVI)プログラムでは、高速道路へのEV充電スタンド設置で、州政府に50億米ドル(約6,700億円)を分配。さらに今回発表の制作により、規格を統一することで、全米で共通したEVスタンドの普及を進める。
もう一つのプログラムは、地域コミュニティへのEV充電スタンド設置での25億米ドルの予算。競争的補助金として2022年後半から運輸省で公募を行う。こちらでも共通規格にすることで、利便性を上げ、コスト削減を図る。
体制では、米政権は、インフラ投資・雇用法に基づき、州政府、企業、その他の関係者と連携する組織として「エネルギー省・運輸省合同事務所」を設立。さらにハリス副大統領は、EV充電ステーションの設置と社会不平等の解決を同時に模索する「EV充電アクションプラン」も発足。運輸省は、居住地にかかわらず、すべてのアメリカ人にEVの運用コスト削減、メンテナンス必要性の軽減、性能向上の恩恵を受ける機会を享受できる「地方EVツールキット」もリリースした。また、「EVインフラ研修プログラム(EVITP)」を進め、高収入の雇用創出にもつなげる。
さらに今回、各省からも国家EVインフラ(NEVI)プログラムの補完政策が相次いで発表された。
まず、エネルギー省・運輸省合同事務所は、新たな連邦諮問委員会「EVワーキンググループ」を発足。小型・中型・大型EVの開発、採用、米国の交通・エネルギーシステムへの統合に関する勧告を行う。25人のメンバーは今後数カ月のうちに選定される予定。さらに、電気システム投資への情報提供と州計画支援のため、米国電力協会、エジソン電気協会、全米農村電気協同組合協会とEV充電を支援するパートナーシップも発表した。
エネルギー省は、「EVs4ALL」プログラムを通じ、超高速充電用バッテリーの開発に4,500万米ドルを拠出すると発表。家庭での充電ができないドライバーや、十分なサービスを受けていない地域に住むドライバーに、EV充電ソリューションを提供するプロジェクトに対しても、複数の資金提供テーマを準備する。すでに実証プログラムに最大3,000万米ドルの予算を検討している。
農務省は、EV移行を検討している人々を支援するため、農村部の土地所有者、州・準州、部族、自治体、協同組合、非・営利団体向けのEV充電リソースガイドと資金調達資格インフォグラフィックを作成。また、農村部の学校へのEVスタンド設置に関する「気候スマートスクールガイド」も作成した。
共通役務庁(GSA)は、連邦政府機関等が、連邦政府が所有・管理・使用する施設において一連のEV充電器やサービスをシームレスに利用できるよう、包括的購入契約(Blanket Purchase Agreement)を作成。「建物所有者向けガイド」も発行した。さらに「グリーン・プルービング・グラウンド・プログラム」を通じ、EV充電のイノベーション実証でエネルギー省と連携。退役軍人省と間では、退役軍人省の施設約60ヶ所で、4,000万米ドル以上のEV充電ステーションを設置することでも合意した。
内務省国立公園局は、政府車両や公共交通車両の電化、及び公共充電インフラに関する国家戦略を策定で、学際的なEVワーキンググループを設立。ザイオン国立公園やグランドキャニオン国立公園で車両の電化を進める計画がすでに始まっている。さらに国立公園へのゲートウェイとなる通路やルートの充電ギャップを埋めるため、州政府の交通局とも協力体制を構築した。
住宅都市開発省は、グリーンビルディング基準の一部として、EV充電インフラを組み込むことを継続的に支援。さらに、グリーン住宅ローン保険料のインセンティブとして、集合住宅へのEV充電器の設置を検討。参加者の年間保険料を引き下げていく考え。
環境保護庁(EPA)は、ディーゼルバスを米国製ゼロ・エミッションバスに転換する「クリーン・スクールバス・プログラム」を創設。この総額50億米ドルの政策では、第一弾として5億米ドルのプログラムを発表。「ENERGY STAR」プログラムでも、優良なEV充電器の普及を進める。
国防総省は、ペンタゴンの公用車用に、レベル2EV充電器20台を設置するパイロットプロジェクトを開始し。追加設置のための計画調査も実施中。ペンタゴン上級気候ワーキンググループは、同省のゼロエミッション車取得目標に向け、EV充電インフラの設置に関する障壁を取り除くことだけに焦点を当てたサブワーキンググループも設立した。
商務省は、国内のEV充電サプライチェーンの構築を支援。米国のEV充電・供給設備製造への海外直接投資も促進している。6月末には、米国への外国直接投資(FDI)を促進するイベント「2022 SelectUSA Investment Summit」も開催する予定。さらに、「Hollings Manufacturing Extension Partnership」では、各州とプエルトリコにある51のセンターで製造業者に実地支援を行い、EV充電サプライチェーンに組み込まれていない地域で、従来の自動車サプライヤーがEV充電市場に参入できるよう支援していく。
【参照ページ】FACT SHEET: Biden-Harris Administration Proposes New Standards for National Electric Vehicle Charging Network
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