英ビジネス・エネルギー・産業戦略省は1月13日、2021年10月に英政府が発表した「ネットゼロ戦略」の独立レビュー報告書を発表。カーボンニュートラルへの転換が英経済を活性させており、さらに多くのアクションを採るべきと提言した。
【参考】【イギリス】政府、ネットゼロ戦略発表。2035年までに全電力で脱炭素化。農業イノベーションも(2021年10月20日)
同省は、独立レビューの委員長として、同省の閣外相を務めたこともあるクリス・スキッドモア下院議員を指名。スキッドモア氏は、レビューの中で、投資家、産業界、各分野の専門家を含む多様なステークホルダーと、50回以上の円卓会議や直接会談を通じて広く協議。さらに、1,800以上の回答も集まった。その内容を踏まえ、今回、「スキッドモア・レポート」が発表された。
同レポートは、スキッドモア氏は、英政府の「ネットゼロ戦略」は正しいと主張。英国が2050年までのカーボンニュートラルで世界をリードしたことが、予想を上回る大きな成果を上げていると強調。環境面だけでなく、英国は経済的に世界的に優位に立つことになったと誇った。
同報告書の内容は、2部構成となっており、第1部では、個人と経済にとっての機会、利益を探求し、英国が経済的利益を実現するためには、より一層、迅速に行動しなければならないことを強調。第2部では、政府と産業界が、この機会を活用し、経済の各分野での行動を活性化させるためのロードマップをまとめた。提言は129にも及ぶ。
具体的な提言では、英国のエネルギー安全保障戦略を加速するため、ガス・電力市場局(Ofgem)の権限を改め、Future System Operatorを組成し、太陽光発電や陸上風力発電等の安価な再生可能エネルギーの接続を加速させるべきとした。また、税制や資本手当を含む脱炭素化投資へのインセンティブを見直し、炭素リーケージ対策の計画を進め、英国の新たな排出量取引制度(ETS)を説明することで、企業のトランジションを促すべきとした。さらに、中小企業に移行を計画し投資するための政策も強化すべきとした。カーボンニュートラルにコミットする企業の応援では、「クラス最高」の認定を行うネットゼロ憲章マークを開発すべきとした。
政府政策では、2023年末までに政府の包括的なファイナンス戦略を策定し、政策全体の根底にカーボンニュートラルを位置づけるよう「ネットゼロ・デリバリー事務局」の設立を提言。さらに、国レベルだけでなく、地方レベルの計画システムを改革し、カーボンニュートラルを中心に据えるべきとした。カーボンニュートラルに関しては、政府の公開報告を拡大することも盛り込んだ。
住宅関連では、よりクリーンで安価で環境を重視した住宅の提供を増やすことを提言。さらに、Future Homes Standardを法制化し、2025年以降、ガスボイラーを備えた新築住宅を建設しないことや、2033年までに販売するすべての住宅をEPC等級制度で「C」以上とすることを求めた。ガスボイラー全般に関しては、2023年までに新設と更新を廃止することを法制化し、ヒートポンプを普及させるべきとした。また、EPC等級制度についても、より明確で利用しやすいネットゼロ・パフォーマンス証明書(NZPC)を一般家庭向けに開発すべきとした。
また、対外関係では、今後の自由貿易協定に環境・気候保護条項を埋め込むことを勧告した。
【参照ページ】Net Zero Review: UK could do more to reap economic benefits of green growth
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