国際金属・鉱業評議会(ICMM)は3月30日、電気自動車(EV)急速充電の国際規格「コンバインド・チャージング・システム(CCS;コンボ)」の普及推進団体CharINと協働で、鉱業用ダンプトラックの電化を目指すタスクフォース「CharIN Mining Taskforce」を設立したと発表した。建機ダンプトラックの抱き込みに向けCCS側が動き出した。
今回の発表は、資源採掘活動でのカーボンニュートラルを目指すためのもの。ロッキーマウンテン研究所(RMI)の調査では、採掘現場から排出される二酸化炭素の最大80%がディーゼルエンジンを搭載した鉱山用運搬車両からの排出。車両の電動化が極めて重要となる。
EV急速充電規格開発で世界で最初に創設されたのは、当時の日産自動車、三菱自動車工業、富士重工業、東京電力が発起人となった「CHAdeMO協議会」。トヨタ自動車も賛同し、5社が幹事会員となり2010年に設立された。今では国内外150社以上が加盟している。
それから2年後の2011年、フォルクスワーゲン、アウディ、BMW、ダイムラー、ポルシェのドイツ大手に、米国のフォードとGMが加わり、「CharIN」が設立。CCSの規格策定に着手した。急速充電で主流のDC(直流)充電と、コンセント等からAC(交流)をDCに変換して充電する「AC充電」にも対応可能な仕様を打ち出した。さらにCCSは、充電ステーションでの支払に関するデータにも対応しており、支払の利便性でも強みがある。ここからCHAdeMOとCCSの国際規格競争が始まった。デジタル通信規格に関しても、CHAdeMOは、国際標準化機構(ISO)が開発したCAN規格を、CCSは独自規格のPLCを採用した。
当初は、欧州でも日産自動車がルノーと組み、欧州でEV普及を先導したことで、CHAdeMOとCCSの双方の規格に対応したEV充電スタンドの導入が欧米でも拡大。2018年頃までは圧倒的な世界シェアを占めてきた。その中で、第3の規格として登場したのは、2013年に中国勢が策定したGB/T規格で、中国でのEV市場発展とともに急速に存在感を高めた。そして2018年、GB/T側からCHAdeMO側に対し、急速充電を上回る超急速充電の規格を共同策定したいという提案が寄せられ、日本側は合意。日中が協力して新規格「ChaoJi(日本名CHAdeMO 3.0)」を開発することとなった。中国としては、欧米勢に対抗するため、同じCANのデジタル通信規格を採用しているCHAdeMOを中国陣営に引き寄せたかった狙いがあったとみられている。こうして、CHAdeMO 3.0は2020年に完成。2021年には最大出力が900kWとなり、2023年にはCHAdeMO 4.0が発行される予定。
これに対し、2010年代後半にEVシフトを一斉に開始した欧州自動車大手はCCS規格の自動車を大量に市場の投入。さらに2021年にはフランスがCHAdeMO規格のEV充電スタンドの設置義務を撤廃。米国でも、フォルクスワーゲン傘下のEV充電サービプロバイダー大手エレクトリファイ・アメリカが、CHAdeMOの段階的廃止を発表。CCSの大幅巻き返しが始まった。2021年9月時点の市場シェアは、欧州ではCCS Type2が47%、CHAdeMOが30% 、テスラのスーパーチャージャーが22%。米国でもテスラのスーパーチャージャー55.3%、CCS Type1が31.6%、CHAdeMOが24.2%で、CHAdeMOは急速に劣勢となった。本田技研工業は、すでに海外ではCCS規格を採用。CHAdeMOの旗手だった日産自動車も2020年、新型EVアリアの海外市場向けはCCSを採用すると発表した。
CCSはすでに2019年、大型車両のためのEV急速充電規格「メガワット・チャージング・システム(MCS)」の開発にも着手。MCSは、eVTOL等の航空機や、フェリー等の船舶にも応用が可能となる模様。MCSは2024年に完成するとみられている。
ICMMは、MCSの知見もあるCCSを今回パートナーに選んだ。タスクフォースに参加する企業は、BHP、リオ・ティント、シェル、ABB、GHD。鉱山環境における充電ソリューションの要件定義、試験、実証を行い、採掘現場における高出力の充電プラグと充電インタフェースの要件定義を目指す。
今回の合意で、さらにCCSが勢いづく形となった。EV充電スタンドの拡大は、米国でもインフラ抑制法(IRA)以降、急速に高まっている。バイデン政権は2月、DC型のEV急速充電規格で、CCS準拠必須を決めた。CHAdeMOについては、2022年度のみは補助金の対象となるが、2023年以降は対象から除外されることが決まっている。
【参照ページ】CharIN Launches New Mining Taskforce in Partnership With ICMM
【参照ページ】中国との超高出力充電共同開発のプレス発表について
【参照ページ】日中次世代超高出力充電規格、チャデモ3.0として発行完了
【参照ページ】National Electric Vehicle Infrastructure Standards and Requirements
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