国連責任銀行原則(PRB)は11月、銀行向けに、自然(生物多様性)分野の目標設定ガイダンスを発行した。銀行10社のケーススタディも掲載した。同様のガイダンスは今回が初。
今回のガイダンスは、PRBの自然目標設定ワーキンググループが策定した。同ワーキンググループの参画企業は、BNPパリバ、サンタンデール銀行、ドイツ銀行、ING、ラボバンク、UBS、バークレイズ、BBVA、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)、コメルツ銀行、ウニ・クレディト、ウリィ・フィナンシャル・グループ等34社。日本の金融機関では農林中央金庫が参画している。
同ガイダンスの策定は、国連生物多様性条約の昆明-モントリオール生物多様性枠組みの目的に沿った目標を銀行が設定できるようにすることを目的としている。策定では、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)、国連環境計画世界自然保護モニタリングセンター(UNEP-WCMC)、科学的根拠に基づく目標ネットワーク(SBTN)、国連生物多様性条約(CBD)事務局、Finance for Biodiversity(FfB)財団からの協力も得た。
同ガイダンスは、「変化の理論(セオリー・オブ・チェンジ)」に基づき、目指す結果を得るためのアクションを整理。「社内方針・手続の変更」「顧客エンゲージメント」「ポートフォリオ構成の変更」「政策アドボカシー&パートナーシップ」の4つの柱を定めた。
(出所)PRB
その上で、目標設定に関しては、昆明-モントリオール生物多様性枠組みに基づき各国政府が制定する国家生物多様性戦略・行動計画(NBSAP)の内容を理解し、達成できるためのアクションを展開していくことを主軸に据えた。さらに目標設定の手法では、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)が策定した「インパクト・プロトコル」に準拠するよう提唱した。
【参考】【国際】UNEP FI、銀行責任原則向けインパクト・プロトコル発行。インパクトマネジメントの総則(2022年10月21日)
具体的な目標設定では、昆明-モントリオール生物多様性枠組みが掲げるインパクト、依存、リスク、機会の4つを踏まえることを推奨。この4分野は、TNFDで示されている項目とも一致する。
インパクトの評価では、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)の「融資ポートフォリオのインパクト測定ツール」を、依存の評価では、UNEP FIとUNEP-WCMCのガイダンスを推奨した。
【参考】【国際】UNEP FI、銀行向け融資ポートフォリオのインパクト測定ツール第2版発表(2021年6月9日)
【参考】【国際】UNEP FI等、自然資本依存度評価ガイダンス発行。金融機関と企業向け。TNFDにも波及(2023年6月25日)
リスクの評価では、移行リスク、物理的リスク、システミックリスクの3つを提示し、システミックリスクに関しては、気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)の分析枠組みを推奨した。機会については、既存のフレームワークは示さず、自然への負のインパクトを、軽減さらにはネットポジティブにできる分野を特定するよう伝えた。
【参考】【国際】NGFS、生物多様性喪失を金融リスクと認識。中央銀行・金融当局での対策必要(2022年4月9日)
インパクト、依存、リスク、機会の評価では、重要セクターに重点を置くべきとした。具体的には、農林水産業、資源採掘、製造業(金属、非金属鉱物、化学、ゴム、プラスチック、紙製品、アパレル・繊維)、電力、建設、輸送、廃棄物・廃水管理を重要セクターとしてとりあげた。
目標設定の水準では、SBTNのSBTs for Natureが提示する科学的根拠に基づく設定を推奨。各融資セクターを、ネイチャーポジティブ、転換可能なネイチャーネガティブ、転換不可能なネイチャーポジティブの3つの分類し、各々で目標設定する手法を示した。
【参照ページ】PRB Nature Target Setting Guidance
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