
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月24日、TOPIX構成企業(2023年12月18日時点)を対象に実施した機関投資家のスチュワード活動に関する第9回アンケートの結果を公表した。IRミーティングの変化、運用会社による統合報告書の活用状況、集団的エンゲージメントの対応評価、議決権行使に関する対話、ESGインデックス採用に関する評価等、GPIFが目指す企業の長期志向経営に向けた内容となっている。
GPIFは、運用会社のスチュワードシップ活動の動向を把握するため定期的に上場企業にアンケートを実施。今回の回答率は33.3%(前年は34.0%)。2,154社にアンケートを送付し717社から回答があった。企業規模別では、大企業の回答率が84.8%に対し、小型企業は24.0%と規模により大きな差が出た。回答期間は1月18日から3月22日。
機関投資家とのIRミーティングについて、過去1年間に「全体または多数の機関投資家の好ましい変化を感じる」との回答が、年々増加する中で、過去最高の16.8%を記録した。
機関投資家に示している長期ビジョンについては、想定年数が「20年以上」とした企業が前年の7.6から7.5%へと微減。「15年以上」との回答も、前年の0.9%と同程度だった。大きな特徴は、「10年以上」が前年の42.4%から38.2%へと減り、反対に「5年以上」が前年の34.7%から37.5%と増えた点にある。全体傾向として、長期ビジョンの時間軸が短くなってしまったと言える。
統合報告書の機関投資家の活用についても、「活用されていると感じる」の回答が、2018年は17.5%、2019年は39.4%、2020年は50.0%、2021年は61.7%、2022年は63.5%、2023年は62.0%で、今回は過去最高の68.5%だた。
TCFD開示状況では、「十分開示できている」の回答が、ガバナンス項目が74.9%、戦略項目が61.3%、リスク管理項目が64.4%、指標・目標項目が59.2%で、いずれも過去最高だった。
TNFD開示状況では、「十分開示できている」の回答が、ガバナンス項目が48.4%、戦略項目が30.3%、リスク管理項目が30.3%、指標・目標項目が30.0%だった。だが、TNFDの開示状況では、そもそも「開示している」が35社にとどまっており、TCFDの609社とは大きく差がある。
ESGで重視しているテーマでは、気候変動が2.6ポイント上昇し、84.9%で3年連続首位。コーポレートガバナンスが67.6%で昨年と変わらず第2位。ダイバーシティも60.3%で、前回から3.3ポイント上昇した。人権と地域社会が45.7%、健康・安全が35.4%の順。
同アンケート結果では、機関投資家と発行体側双方の改善が見られるが、依然として回答率が33.3%と少ないことから、回答に積極的に応じていない企業の状況が気にかかる状況だ。
【参照ページ】「第9回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について
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