国際サッカー連盟(FIFA)は11月29日、12月11日に実施されるワールドカップ開催地決定のための臨時FIFA会議に向け、入札評価報告書を公表した。2034年開催地候補サウジアラビアに関し、人権リスクが「中」と判定されたことが注目を集めている。
現在、FIFAワールドカップの開催地では、2030年開催はモロッコ・ポルトガル・スペインの共催、2034年開催はサウジアラビア主催が唯一の候補として残っている状態。今回公表された入札評価報告書は、インフラ、サービス、商業的側面から、イベントのビジョン、サステナビリティ、人権に至るまで、さまざまな基準が盛り込まれている。
今回の報告書では、サウジアラビア・サッカー協会の招致文書について、安全・安全保障、労働者の権利(基本的労働権、移住労働者の権利)、子どもの権利、ジェンダー平等と非差別、表現の自由(報道の自由含む)について人権コミットメントが提出されていると認識。開催都市協定、スタジアム協定、空港協定、トレーニング会場協定、IBC協定、宿泊協定等においても、人権尊重に関する条項が含まれていると確認している。
労働者の権利に関しては、招致文書では、サウジアラビア・サッカー協会は、法改正が必要な分野を強調し、実効性のある執行の必要性に言及。この点は、評価されたが、法改正や適切な執行がなければ、ディーセントでない労働条件のリスクが高まる可能性があるとした。
ジェンダー平等と非差別では、関連する国際基準との差異や留保があるとし、特にイスラム法と矛盾すると見なされる場合にがあることについても言及があった。
安全保障に関しては、司法手続における適正手続に関する国連拷問禁止委員会の留保に言及。民間警備請負業者の運営に潜在するリスクがあることも指摘した。コミットしている対策を開催までの実施することにも多大な労力と時間を要するだろうと述べている。
表現の自由と報道の自由に関しては、過去の国連の報告書で、オンラインとオフラインの両方で表現の自由の完全な法的保護を確保するための法律の不備に言及されていることを指摘。サウジアラビア当局に対し、ジャーナリストと人権擁護者を保護するための強化措置を採用するよう要請していることにも留意した。この対策についても、招致文書ではコミットしているが、同様に多大な労力と時間を要するだろうと述べた。
全体総括では、上記のようなリスクはあるものの、サウジアラビア政府が2016年に発表した「ビジョン2030」に基づく、社会開放政策を高く評価。今回のワールドカップ開催により、人権尊重が大きく進展する機会にもなるとの見解を伝えた。結果、サウジアラビア2034招致は、「サステナビリティに対する全体的な取り組みとして優れている」と評価した。
【参考】【サウジアラビア】サルマーン国王「ビジョン2030」で石油依存からの脱却を発表(2016年5月16日)
【参照ページ】Bid evaluation reports for 2030 and 2034 editions of FIFA World Cup published
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