
英ESG投資推進NGOのShareActionは3月20日、食品世界大手スイスのネスレに対し、栄養観点での商品ポートフォリオ見直しに関する定款変更を求める株主提案を提出し、同社株主に支持を求める書簡を送付したと発表した。
今回の株主提案の内容は、年次報告での非財務事項に関する報告を規定する定款第23条2項を新設するというもの。具体的には、「各会計年度において、取締役会は、持続可能な開発、社会問題、雇用問題、人権尊重、腐敗防止に関する報告書を作成し、特定のESG重要業績評価指標(KPI)に関連して達成された結果を提示するものとする。これらのKPIには、政府お墨付きの栄養プロファイリングモデルによって定義された、健康性に応じた食品・飲料の売上と売上比率が含まれる。同社は、これらの健康的な製品に由来する売上高の割合を増加させるためのスケジュールを定めた目標を設定する」というもの。
ShareActionは、株主提案の根拠として、公衆衛生上、広く受け入れられている「不健康」の定義に該当する食品や飲料の販売に大きく依存している企業への投資のリスクを指摘。ネスレに対し、健康的な商品販売への戦略的な転換に失敗した場合、同社のブランド価値と長期的な財務リターンが継続的に低下する可能性があると警鐘を鳴らした。「健康的な食品」の定義では、「オーストラリアのHSR等の政府が支持する栄養プロファイリングモデルに基づくもの」と言及した。
書簡の送付先には、ブラックロック、バンガード、JPモルガン・アセット・マネジメント、Aviva Investors、フィデリティ・インベストメンツ等、運用世界大手各社が含まれている。
これに対しネスレは3月21日、ShareAction等の提案について、同社が消費者のために果たす役割を誤解しており、戦略を誤った方向に導くものと表明した。
同社はすでに、2030年までに栄養価の高い健康的な商品での売上を、200億スイスフランから250億スイスフラン(約3.2兆円から約4兆円)の規模まで伸ばす目標も設定していると言及。2023年には、食品飲料企業として初めて全商品ポートフォリオで栄養価の透明性を確保した点にも触れ、同社はバランスの取れたレジリエンスのある商品ポートフォリオを有していると強調した。
【参考】【国際】ネスレ、健康的な食品で2030年売上目標を約4兆円に設定。2022年比50%伸長(2023年9月30日)
【参考】【国際】ネスレ、Health Star Ratingを用いた商品毎の栄養情報開示決定。まず14カ国(2022年11月28日)
さらに同社は、世界中の人々のバランスの取れた食生活の実現に向け、嗜好品、特に菓子とアイスクリームでの責任あるマーケティングを強化しており、16歳未満への広告・マーケティングの自主禁止も行っているとも説明した。
【参考】【国際】ネスレ、16歳未満への広告・マーケティングを自主禁止。全世界で適用(2022年12月7日)
これらを踏まえ同社は、ShareActionの提案に同意できないとし、反対を推奨。同社としては、すでに設定した目標を維持し、達成に向けたアクションを進めていくと語った。
【参照ページ】Investors urged to support Nestlé health resolution
【参照ページ】Nestlé's portfolio, nutrition strategy, and road ahead
【画像】Nestlé's
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