
食品・飲料、農産物、アパレル等の企業で、リジェネラティブ農業(再生農業)を原材料調達戦略に組み込む動きが拡大している。直近ではネスレが、コーヒーブランド「ネスカフェ」で2025年に調達したコーヒー豆の50%以上が、リジェネラティブ農業を実践する農家からのものだったと発表。前年から20ポイント以上増加した。2026年6月には、食品・農業バリューチェーンの企業等40団体超が、持続可能な農業促進の国際イニシアチブ「SAIプラットフォーム」のリジェネラティブ農業拡大プログラムへの支持を表明。リジェネラティブ農業は、個別企業による小規模な実証から、複数企業が関与するサプライチェーン規模での導入拡大へと移り始めた。
【参考】【国際】ネスカフェ、リジェネラティブ農業によるコーヒー豆調達比率が50%超え。2025年(2026年6月21日)
一方、リジェネラティブ農業には、世界共通の法的定義や統一されたアウトカム測定方法がない。農家が研修に参加しただけの農地と、実際に農法を転換した農地、さらに土壌、水、生物多様性等の改善が確認された農地を、同じ「実践面積」として扱えば、比較可能性が失われる。こうした状況を受け、欧州では2026年6月、NGO23団体が、企業ブランディングや政策で「リジェネラティブ農業」という言葉が曖昧に用いられ、実質的な農業転換を伴わないマーケティング上の訴求が消費者や政策当局を誤認させる可能性があると共同声明を発表した。
【参考】【EU】欧州環境NGO等、リジェネラティブ農業の曖昧な使用に共同声明。グリーンウォッシュに警鐘(2026年6月9日)
現在問われているのは、リジェネラティブ農業を実践する企業が増えているかどうかだけではない。農家の移行リスクを誰が負担し、環境アウトカムをどのように測定し、それを調達、炭素会計、商品戦略及び投資家向け情報開示にどう組み込むかが問われている。本稿では、実践上のボトルネックと、企業や投資家の対応を解説する。
リジェネラティブ農業とは何か
リジェネラティブ農業には、現時点で広く合意された定義がない。学術誌「Frontiers in Sustainable Food Systems」に2020年に掲載されたレビュー論文は、査読付き論文229本と実務機関25団体を分析し、法的・規制上の定義も共通定義も存在しないと指摘。定義は、特定の農法を示す「プロセス型」、達成すべき環境・社会アウトカムを示す「アウトカム型」、双方の組合せに大別されると整理した。
プロセス型では、耕起の削減または不耕起栽培、カバークロップ、輪作、堆肥の活用、化学肥料・農薬への依存低減、アグロフォレストリー等が挙げられる。アウトカム型では、土壌の健全性、土壌有機炭素、水質、生物多様性、農地の生産性、農家の収益性等の改善が重視される。
有機農業とも同義ではない。有機農業が認証基準で定められた資材や生産工程の遵守を重視するのに対し、リジェネラティブ農業では、農法を導入した結果として農地や農業経営が改善したかを重視する考え方が広がっている。アウトカムの測定には数年を要することもあるが、測定結果が出るまでに重大な環境負荷が生じることも防がなければならない。
例えば、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が2026年3月に公表したリジェネラティブ農業フレームワークは、プログラムと農場双方の最低基準を設けつつ、地域の多様性に応じた柔軟性を組み合わせる構造を採用している。今後の企業実装でも、最低限の実践要件を設定した上で、地域毎に重要なアウトカム指標を選択する、プロセス型とアウトカム型のハイブリッド構造が中心になる可能性が高い。
その上で、企業によるリジェネラティブ農業の実践は、二つの層に分けて考える必要がある。一つ目は、農場での農法転換であり、農家の技術、設備、収量、費用、地域の気候・土壌条件が論点となる。二つ目は、農場で得られたアウトカムを、企業の調達、炭素会計、商品表示、投資家向け開示に組み込むことであり、農地または生産地域までのトレーサビリティ、アウトカム測定、二重計上防止、保証が課題となる。これまでは農法導入や対象面積の拡大が先行してきたが、近年はアウトカム測定やスコープ3目標への接続も進み始めている。但し、定量目標、農家への資金支援、第三者保証等を含め、実装の深度には企業間で大きな差がある。
ネスカフェの調達比率50%超も、企業が定義した農法を実践する農家からの調達比率であり、対象となる全農地で土壌炭素や農家所得等が改善したことを意味するものではない。活動量からアウトカムへと評価を移行できるかが次の段階となる。
投資家はリジェネラティブ農業の何を評価しているか
機関投資家は、リジェネラティブ農業を、気候変動、自然損失、土壌劣化、原材料供給リスクに対応する有力な手段の一つと捉えている。食品・農業分野の投資家ネットワークFAIRRは2026年、食品・農業企業78社を調査。64%が情報開示でリジェネラティブ農業に言及し、54%がアウトカム測定への言及またはMRV(測定・報告・検証)の導入を行っていた。一方、定量目標を設定していた企業は28%に留まり、2023年の35%から低下した。リジェネラティブ農業とスコープ3目標を結び付ける企業は52%へ増加したものの、農家に金銭的支援を提供する企業は40%で、支出額も売上高の0.01%から0.05%に留まった。
【参考】【国際】FAIRR、上場企業78社のリジェネラティブ農業実践分析。開示の質に大きな進展(2026年7月2日)
投資家が企業を評価する際の主な論点は、リジェネラティブ農業プログラムの対象範囲、定量的な目標、想定する環境・社会アウトカム、アウトカム測定及びMRV(測定・報告・検証)、農家への金銭的インセンティブや移行支援、気候・自然戦略及びガバナンスとの統合、進捗やトレードオフに関する情報開示等だ。
一方、アウトカム測定への着手は進み始めているものの、測定の多くはプロジェクト単位に留まり、アウトカム型目標を設定する企業も限定的だ。機関投資家は、リジェネラティブ農業を自然関連リスクや原材料調達リスクへの対応手段として前向きに評価する一方、名称や農法の導入だけではなく、測定可能で信頼性のある農業転換となっているかを見極めようとしている。
定義の乱立を共通フレームワークで抑えられるか
最初のボトルネックは、企業毎に「リジェネラティブ農業」の定義や対象面積の算定方法が異なることだ。企業目標には、プログラムへの参加面積、特定農法を導入した面積、リジェネラティブ農業を前進させた面積、リジェネラティブ、修復、保護の各農法を導入した面積等、異なる概念が用いられている。さらに、多くの企業目標は農法や対象面積等の活動量を基準としており、アウトカムの改善を目標としている企業は限定的だ。そのため、公表された面積だけを用いて企業間の実践規模や成果を単純比較することはできない。
この課題への対応が、SAIプラットフォームのリジェネラティブ農業への移行に向けた実務的フレームワーク「Regenerating Together Programme(RTP)」だ。世界共通のアウトカム型フレームワークと移行支援で構成されている。農場・地域の環境状況を分析し、重要なアウトカムと指標を選び、適切な農法を導入し、継続的にモニタリングする流れを採用。第三者検証に対応した環境主張を行えるようにすることも想定している。全地域に同じ農法を義務付けず、世界共通の原則と地域に応じた農法・指標を組み合わせており、40社超が実装への支持を表明した。
【参考】【国際】SAIプラットフォーム、リジェネラティブ農業実装支援RTP正式開始。第三者検証等導入(2026年6月29日)
但し、共通フレームワークを導入しても、各企業が異なるアウトカム指標や基準年を選択すれば、企業間比較は依然難しい。最低限必要な農法や禁止すべき行為が曖昧になれば、小幅な改善だけでリジェネラティブ農業を主張する余地も残る。共通フレームワークには、地域に応じた柔軟性と、環境主張の信頼性を確保する最低要件の双方が必要になる。
農家の移行リスクを誰が負担するのか
普及の最大の課題の一つが、農家の経済的リスクである。農法転換には、カバークロップの種子や新たな農業機械等への初期投資に加え、技術習得やアウトカム測定・報告への対応が必要となる。農家が新たな農法を習得し、土壌状態が安定するまで、収量や品質、収益が一時的に不安定になる可能性もある。移行は、企業にとっては長期的なスコープ3削減や供給安定化への投資となる一方、農家には短期的な費用と収入減少のリスクが生じる。
これに対し、リジェネラティブ農業の実践で先行する企業は対応を始めている。ネスレと農業テック企業Soil Capitalは2026年4月、欧州でリジェネラティブ農業を拡大する4年間の契約を締結し、農家に農学的助言、インパクト測定ツール、金銭的インセンティブを提供すると発表。マクドナルド米国法人、米農務省自然資源保全局(NRCS)、全米魚類野生生物財団(NFWF)、一部サプライヤー等が参画する官民イニシアチブは、7年間に2億米ドル(約320億円)超を投じ、最大400万エーカーの放牧地でリジェネラティブ放牧や生息地保全を支援する計画を進めており、同社とサプライヤー、公的機関等が資金を拠出し、NFWFが助成金を管理する構造だ。ベター・コットン・イニシアチブ(BCI)の米国綿花農家での実証では、小売企業やブランドが二酸化炭素1t単位で削減量を購入でき、農家に1t当たり53米ドルを還元する仕組みが導入された。
【参考】【ヨーロッパ】ネスレとSoil Capital、リジェネラティブ農業拡大で4年間提携。スコープ3等(2026年4月23日)
【参考】【アメリカ】マクドナルド、リジェネラティブ放牧転換加速でNGOと提携。300億円拠出(2025年9月18日)
【参考】【アメリカ】BCI、綿花農家でリジェネラティブ農業実証。GHG最大77%削減(2026年5月19日)
但し、単発の助成金や企業予算だけでは、農家の移行期全体の費用とリスクを十分にカバーできるとは限らない。長期的な普及には、価格プレミアム、複数年の買取契約、低利融資、返済猶予、保険等を組み合わせ、農家が農法転換を継続できる経済的基盤を構築する必要がある。企業のアクションを評価する際には、「農家を何人支援したか」だけでなく、企業や金融機関が移行費用や収量リスクをどこまで分担し、支援期間中及び終了後も農家が経済的に農法を継続できる設計になっているかを確認する必要がある。
面積拡大と収量・供給安定性は両立するか
リジェネラティブ農業には統一された農法がなく、収量への影響も、作物、気候、土壌、導入する農法、地域条件等によって異なるため、慣行農業と比べた世界共通の収量差を示すことは難しい。企業にとっては、単年の面積当たり収量だけでなく、気象条件の変化に伴う収量変動、投入資材費、農家の粗利益、農産物1単位当たりの温室効果ガス排出量等を総合的に評価することが重要だ。収量が一時的に低下しても、資材費が減少し、悪天候時の収量変動が抑えられれば、中長期的な収益性と供給安定性が改善する場合がある。一方、収量低下を補うために別地域で農地が拡大すれば、土地利用変化に伴う温室効果ガス排出や自然生態系への影響を通じ、対象農地で得られた環境便益を相殺する可能性がある。
こうした不確実性に対し企業は、コーヒー、カカオ、綿花、牛肉等、作物・地域毎の実証を通じ、農法の組合せを選びながら、段階的に拡大する方法を採っている。但し、大規模なプログラムが企業全体の温室効果ガス排出削減を保証するわけではない。リジェネラティブ農業を牛肉サプライチェーンの重要な戦略と位置付けるマクドナルドは2026年、2030年までのスコープ3削減目標を当初期限内に達成することは困難との見通しを示した。同見通しはリジェネラティブ農業プログラム単独の評価ではないが、農場単位のアクションと企業全体の排出削減目標への寄与を分けて評価する必要性を示している。
【参考】【国際】マクドナルド、2030年スコープ3目標未達見通し。2050年ネットゼロ目標は維持(2026年6月2日)
アウトカム測定とスコープ3への算入が次のボトルネック
企業による環境アウトカムの測定やMRVの導入は近年急速に進んでいる。但し、測定の多くは一部のプロジェクトを対象とする段階に留まり、対象農地全体での測定や、定量的なアウトカム目標及び進捗開示まで実施する企業は限定的だ。土壌炭素は、同じ農地の中でも地形、土質、過去の土地管理等によって大きく異なり、少数の土壌サンプルで広い農地全体の変化を推定することには不確実性が伴う。そのため企業は、現地での土壌採取、農家が記録する農法・投入資材データ、衛星画像、統計モデル等を組み合わせる方向にある。
BCIの米国での実証では、対象綿花農家の温室効果ガス排出量が地域平均比で54%低く、土壌等への除去を含めると最大77%の削減効果があったと報告された。但し、これは特定地域・参加農家に関する実証結果であり、リジェネラティブ・コットン全体の平均削減率ではない。企業は大きな削減率だけを広告に使うのではなく、算定境界、比較対象、測定方法及び不確実性を併せて説明する必要がある。
【参考】【アメリカ】BCI、綿花農家でリジェネラティブ農業実証。GHG最大77%削減(2026年5月19日)
また、土壌炭素が増加しても、生物多様性や水に関するアウトカムまで同時に改善したとは判断できない。気候分野では二酸化炭素換算量が共通指標として用いられているが、自然の状態は単一の指標では捉えられず、土壌、生態系、種、水等を複数の指標で測定する必要がある。企業間で比較可能な共通指標と測定方法の整備は、現在も国際的な課題となっている。
【参考】【環境】グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026開催。開示から測定・実装・価値化へ。熊本宣言(2026年7月17日)
さらに、農場で排出削減や炭素除去が確認されても、それを企業のスコープ3インベントリに農場固有の数値として反映するには、調達量と生産地域を結び付けるトレーサビリティが必要となる。農産物は集荷・加工段階で混合されることが多く、企業は、分別管理、管理された混合、一定条件を満たすマスバランス等を通じて、対象農地や調達地域との物理的な対応関係を管理しなければならない。
また、土壌炭素を除去量として計上する場合には、継続的に貯留状態を監視し、再放出時にはリバーサルとして処理する必要がある。農法転換による長期的かつ重大な収量低下等により、別地域での農地拡大を誘発するリスクが高い場合には、リーケージの算定・報告も必要となる。削減・除去をカーボンクレジットとして発行する場合には、適用するクレジット基準に基づき、追加性等の品質要件を確認しなければならない。
こうした課題への対応として、GHGプロトコルは2026年、「Land Sector and Removals Standard」と関連ガイダンスを公表。農地管理及び土地利用変化による排出量、土地等に貯留される二酸化炭素除去等を、企業の温室効果ガスインベントリで算定・報告する方法を示した。これまで独自手法でスコープ3削減を推計してきた企業は、今後、農地との空間的な結び付き、データ品質、土地利用変化、除去量の扱いについて、より詳細な説明を求められる可能性が高い。ボトルネックは、農場で農法を導入できるかだけでなく、農場データをバリューチェーンで引き継ぎ、企業の会計・目標・商品表示に耐え得る品質で管理できるかへと移っていく。
【参考】【国際】GHGプロトコル、土地セクター除去(LSR)基準公表。2027年1月から適用(2026年2月4日)
リジェネラティブ農業を商品・事業価値に転換できるか
リジェネラティブ農業を長期的に継続するには、環境部門の予算や一時的な実証資金に依存するのではなく、調達、商品品質、ブランド価値、資源循環、売上等の事業価値に結び付けなければならない。メーカーズマークは2026年、農場由来の風味を訴求するウイスキー「Star Hill Farm Whisky」の新商品を発売し、リジェネラティブ農業を原料と風味の関係に結び付けて商品価値として提示した。サントリーホールディングスとTOWINGは、茶粕等の飲料製造残渣を活用した高機能バイオ炭「宙炭」の本格製造を開始し、九州で地域循環モデルの構築を目指している。
【参考】【アメリカ】メーカーズマーク、リジェネラティブ農業由来ウイスキー発売。土壌と風味の関係訴求(2026年5月13日)
【参考】【日本】サントリーとTOWING、飲料製造残渣由来バイオ炭の本格製造開始。茶粕活用(2026年6月4日)
消費者の理解も限定的だ。米国成人2,000人超を対象としたKiss the Groundの2026年調査では、リジェネラティブ農業を実質的に理解している割合は、2025年の7%から13%への上昇に留まった。「環境に優しい」と抽象的に訴求するのではなく、農家、地域、農法、測定された環境アウトカムを具体的に説明し、誤認を招かない表示を行う必要がある。
【参考】【アメリカ】リジェネラティブ農業に対する消費者理解上昇。環境配慮より健康・鮮度を意識(2026年6月23日)
小規模農家や地域コミュニティを取り残さない仕組みを構築できるか
社会面の評価も欠かせない。高精度なトレーサビリティやMRV(測定・報告・検証)を必須とすれば、対応能力の高い大規模農家に調達が集中し、小規模農家がサプライチェーンから排除される可能性がある。農家が提供した収量、土壌、位置情報等のデータを誰が所有し、企業がスコープ3削減や商品価値を主張する場合に、農家へ便益をどう還元するかも明確にしなければならない。Nature Action 100の評価でも、企業の自然関連対応の中で、先住民族及び地域コミュニティの権利尊重に向けたアクションや情報開示の遅れが示されている。
【参考】【国際】機関投資家団体NA100、第1回自然ベンチマーク評価結果発表。日本企業5社も苦しい評価(2024年10月30日)
また、同じ農家が複数企業のプログラムに対応する場合、企業毎に異なる農法基準、データ項目、測定・検証手続を求めると、農家やサプライチェーンの事務負担は増大する。SAIプラットフォームが共通フレームワークを構築した目的の一つも、基準や定義、データ収集・報告の重複を減らすことにある。今後は、同じ作物・地域を調達する複数企業が、農家支援やアウトカム測定、データ基盤への投資で協働し、共通指標に基づいてデータを収集・検証する仕組みが重要となる。
企業がまず取り組むべきこと
企業が最初に行うべきは、単に大規模な面積目標を掲げることではない。自社が調達する主要農産物と生産地域を特定し、農場及び周辺地域の環境・社会状況を分析した上で、事業と地域にとって重要な自然・社会アウトカムを特定する必要がある。
その上で、自社が何をリジェネラティブ農業と呼ぶかを明示することも重要だ。対象農法、最低要件、適用範囲、測定するアウトカム、対象面積の算定方法、基準年を定め、農法の導入等の活動量と、環境・社会アウトカムを区別して開示する必要がある。
実装段階では、農家の移行支援とアウトカム測定を並行して設計する必要がある。農家との間では複数年の移行計画を策定し、農家が短期的リスクを負う場合には、価格プレミアム、長期買取契約、融資、保険等を組み合わせ、企業や金融機関も移行費用と収量リスクを分担する仕組みを構築する。一方、アウトカム測定では、地域にとって重要な指標を選定し、プログラム開始時のベースラインを設定した上で、継続的に測定・検証できる体制を整える必要がある。
情報開示では、成功事例だけでなく、目標未達、想定したアウトカムが得られなかった事例、農法間のトレードオフ、測定上の限界や不確実性等も説明することが望ましい。問題を開示し、農法や支援方法を修正すること自体が、継続的改善の重要な要素となる。
今後の焦点
リジェネラティブ農業は、概念整理や小規模な実証の段階から、実際のサプライチェーンで規模拡大を試みる段階へ移りつつある。但し、企業間及び論点毎の進展は一様ではない。アウトカム測定への着手やスコープ3戦略との接続は進んだ一方、測定の多くは個別プロジェクトに留まり、複数年かつ企業全体でのアウトカム目標と進捗開示は限定的だ。
農家の長期的な経済性や社会面についても、企業全体での測定・開示は限定的で、業界共通指標の開発と実証も続いている。炭素会計、トレーサビリティ及び第三者検証についても、国際的な基準や仕組みの整備が進み始めた段階だ。今後の企業評価で重要になるのは、農法を導入した面積だけではなく、どのような環境・社会・経済アウトカムが生じ、それが企業全体の調達、排出量、事業レジリエンスの改善にどのように繋がっているかである。
企業が農家に農法転換を求めるだけでは、普及は継続しない。環境アウトカムを企業の調達、商品、会計、金融及び経営判断に組み込み、農家にも経済的便益が還元される構造を形成できるかが、農業・食品システムの実質的な転換を左右する。
【参照ページ】What Is Regenerative Agriculture? A Review of Scholar and Practitioner Definitions Based on Processes and Outcomes.
【参照ページ】IFC Approach and Framework for Regenerative Agriculture
【参照ページ】The Economics of Regenerative Agriculture
【参照ページ】Financing regenerative agriculture in Europe
【参照ページ】Where regenerative farming practices could increase yields: a global assessment
【参照ページ】State of Nature Metrics
【参照ページ】Regenerating Together Programme
【参照ページ】A digital soil mapping approach to soil carbon monitoring, reporting and verification (MRV)
無料会員に登録すると、
有料記事の「閲覧チケット」を毎月1枚プレゼント。
登録後、すぐにご希望の有料記事の閲覧が可能です。
無料登録してチケットを受け取る
【無料会員向け】有料記事の閲覧チケットの詳細はこちら
または
有料会員プランで
企業内の情報収集を効率化
- 2000本近い最新有料記事が読み放題
- 有料会員継続率98%の高い満足度
- 有料会員の役職者比率46%
有料会員プランに登録する
菊池尚人
チーフコンサルタント 兼 事業開発室長
2016年新卒から10年コンサルティング業界に従事。2019年より現職。
大手企業・金融機関向けESG戦略・投資アドバイザリーのリードに加え、 サステナビリティ経営に関する研修講師、Sustainable Japan編集も務める。