経済産業省資源エネルギー庁は8月3日、総合資源エネルギー調査会の第8回発電コスト検証ワーキンググループを開催。その中で、委員の東京大学生産技術研究所の荻本和彦特任教授と日本エネルギー経済研究所松尾雄司研究主幹が、有志での算出として、統合コストの一部を考慮した発電コストを提示した。
今回の試算によると、再生可能エネルギーは、系統安定化費用がかかることから、太陽光発電や風力発電のコストが、ガス火力発電や原子力発電を大きく上回るものとなった。同ワーキンググループは7月13日の第7回会合で、発電コストの最新の試算結果を発表。わずか1か月未満で、発電コストの情報の前提が崩れる形となった。
【参考】【日本】エネ庁、2030年の発電コスト試算発表。太陽光が最安で原発を下回る。日本初(2021年7月13日)
(出所)資源エネルギー庁
今回の一連の動きの背景には、発電コストの算出を巡る学術的な課題がある。一般的に普及している「発電コスト」は、均等化費用(LCOE)と呼ばれ、発電所の固有の費用に基づき、発電コストを算出している。LCOEについては、各国での定義も概ね一致しており、国際的に普及している。第7回のワーキンググループで示されたのはLCOEでの発電コストだった。
一方、発電所のコスト比較では、発電所のコストだけでなく、送配電等を含む電力システム全体のコストや、災害対策や安全保障対策等の外部費用までを含めて比較すべきという声も上がっており、「統合コスト」とも呼ばれている。統合コストについては、欧州でも算出の動きが出ているが、国際的に共通な定義はなく見解の相違がある分野。今回の第8回で示されたのは、統合コストのうち、火力の起動停止や揚水損失等のコストを反映したモデルを考案し「LCOE*」と命名している。
今回の算出結果は、翌日に開催された総合資源エネルギー調査会でも報告され、資源エネルギー庁の事務局飼料では、第7回ワーキンググループと第8回ワーキンググループの各々のコスト試算データが併記された状態となった。算出を行った東京大学生産技術研究所の荻本和彦特任教授は、第7回ワーキンググループのLCOE試算に関しても、同ワーキンググループの見解とは一部違う定義になっていていたとも話していた。
【参照ページ】総合資源エネルギー調査会
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