フランスの公的積立年金基金FRR(フランス年金準備基金)は1月、責任投資に関するプレスリリースを3つ発表した。1つ目は投資ポートフォリオにおけるカーボンフットプリント算出および分析を実施する委託先の公募。2つ目はESG(環境、社会、ガバナンス)投資運用の委託先選定結果の通知。3つ目はフランス非上場企業の私募債投資運用の委託先選定結果の通知。
投資ポートフォリオのフットプリント分析
1月6日、FRRの投資ポートフォリオにおけるカーボンフットプリントの算出、分析を実施する委託先の公募が告示された。保有する金融資産が気候変動によりどのようなリスクを負っているのかを明らかにすることを目的としている。投資先ポートフォリオのフットプリントを算出することで、二酸化炭素排出量の高いアセット、その実質的なリスクを特定し、エネルギーや環境の移行を目指す。また、これらは世界的な目標である気候変動対応を念頭に入れたもの。
株式投資におけるESG運用委託
1月19日、FRRは2015年7月10日に発表した「ESG手法の株式運用委託(Equities Optimised Management Mandates with ESG approach)」の委託先運用会社の選定結果を発表した。選ばれたのは、アムンディ・アセット・マネジメント、Candriam Luxembourg、ロベコ・インスティチューショナウ・アセット・マネジメントの3社。FRRが定める責任投資戦略を実践し、ESGに関連するベスト・プラクティスとなる企業の選定に当たる。運用規模は50億ユーロ、4年契約で1年間の延長が認められる。
フランス中小企業私募債の長期運用委託
1月10日および23日、FRRは昨年5月に公募したフランス中小企業の私募債投資ファンドの運用委託先を発表した。BNPパリバ・アセットマネジメントとSchelcher Prince Gestionの2社が選定された。FRRは、中小企業新興のため、中小企業のM&Aを支援するためのM&Aファイナンス私募債を一つのアセットクラスとして定め、この分野に投資する。運用額は3億ユーロ、12年契約で2年間の延長が認められる。
FRRは、ESG投資を実施する世界的に有名な機関投資家。2005年に同機関初となる「SRI戦略」を策定。翌年には、その強化を図るため、財務リターン以外の基準も含めたポートフォリオ全体の価値評価を実施。2007年には投資先のカーボンフットプリント測定を初めて行った。2011年には、「SRI Equities New Sustainable Growth Europe」の委託契約でESGのベストプラクティス企業選定に基づく運用を開始、責任投資に基づく投資を本格的にスタートさせた。
この流れを受け、2012年、水、環境テクノロジー、廃棄物処理・管理、再生可能エネルギー、気候変動、持続可能な開発の6分野のテーマ型運用を1.65億ユーロ規模で実施した。気候変動が長期リスクとなり、資産にマイナスの影響を及ぼすとして、2014年には株式ポートフォリオのカーボンフットプリント測定と分析を体系的に実施するとともに、スウェーデンの年金基金AP4、アムンディ、MSCIとともに低炭素インデックスを設定も行った。また、モントリオール・カーボン・プレッジと、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)が推進するPDC(Portfolio Decarbonization Coalition)にも署名している。最近では、2016年にたばこ産業、石炭産業からのダイベストメント(投資引揚げ)を行うなど、過去10年以上に渡って責任投資を拡大している。
フランスは2016年末のCOP21開催よりパリ協定を取りまとめ、政策、立法においても脱炭素、ESG投資を推進してきた。FRR以外の機関投資家においても責任投資が浸透しており、北欧同様、先駆的な取り組みが多く見られる。フランスの懸念材料は今年開催される大統領選挙。米トランプ大統領と政策が近い、ルペン候補が目下のところ多くの支持を集めている。
【参照ページ】Contract Awards 2015FRR02 “Equities Optimised Management Mandates with ESG1
approach”
【参照ページ】LAUNCH OF ADAPTED PROCUREMENT PROCESS: ANALYSIS AND MEASUREMENT OF THE ENVIRONMENTAL FOOTPRINT OF THE FRR’S PORTFOLIO
【参照ページ】Awarded Mandates for the contract 2016FRR02 Lot 1 “Dedicated funds mandates : private debt of French companies”
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