【スイス】大手年金基金・保険会社の投資ポートフォリオ2℃目標遵守度チェック結果を発表 2017/11/03 最新ニュース

 金融業界の気候変動対応を促す国際イニシアチブ2° Investing Initiative(2°ii)は10月24日、スイスの保険会社と年金基金を対象に実施してきた投資ポートフォリオの気候変動対応度査定プログラム「Climate Alignment Pilot Tests」の分析結果を発表した。同プログラムは、保険会社と年金基金の自主参加を基本としていたが、スイス財務省国際金融担当事務局(SIF)とスイス連邦環境・運輸・エネルギー・通信省連邦環境局(FOEN)がプログラムを主導し、スイス保険協会(SVV)とスイス年金基金協会(ASIP)も支援したため、保険大手と年金基金大手の計79機関投資家が参加した。

【参考】【スイス】大手年金基金・保険会社、投資ポートフォリオの2℃目標遵守度合いをチェック。TCFDの影響(2017年8月29日)

 同プログラムは、機関投資家が、投資ポートフォリオの株と債券構成銘柄と投資額のデータを提供すると、2° Investing Initiativeが無料で、パリ協定で国際合意となった2℃目標への遵守度合いを査定してくれるというもの。結果は、データを提出した機関投資家のみにフィードバックされるが、全体傾向に関する報告書は公表することとなっており、その報告書が今回発表された。

 参加した機関投資家は、保険会社が16、年金基金が66で、総計82。そのうち3社は保険と年金基金双方で参加したため、企業数では79社となる。保険会社16社の合計運用資産総額は約1,200億スイスフラン(約13.6兆円)で、同国保険の株・債券運用総額の約70%を占める。年金基金66機関の合計運用資産総額は、1,770スイスフラン(約20.1兆円)で、同国年金基金の株・債券運用総額の約61%を占める。スイスでは、年金基金が分散しており、保険会社と合わせ1,500社があると言われているが、ほとんどの大手が今回のプログラムに参加した。

 2° Investing Initiativeが査定に用いた分析モデルは、「Paris Agreement Capital Transition Assessment(PACTA)」モデルというもの。これは、2° Investing Initiativeの呼びかけで集まったNGOや研究機関10団体によるコンソーシアムが開発。EUの研究助成プログラム「Horizon 2020」が資金援助する「SEI Metrics(SEI-M)研究プロジェクト」の一部としても位置づけられている。このモデルでは、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイドラインに基づく2℃目標シナリオ分析を行い、査定が実施される。

 今回のプログラムの焦点は主に2つ。まず、世界の二酸化炭素排出量に占める割合が多いエネルギー、電力、自動車等のセクターに焦点を当て、ポートフォリオのエクスポージャーをチェック。そして、気候変動対応が世界的に進まず異変が起きた後5年から10年遅れで急激に低炭素社会への移行するシナリオ「Disruptive Transition」がもたらすポートフォリオの投資リスクもチェックされた。

 分析の結果、スイスの保険会社と年金基金の全体では、ガス火力発電や石炭火力発電分野への投資が多い一方、再生可能エネルギーへの投資割合が少ないことがわかり、現状は6℃上昇シナリオにあるという。報告書は、一般家庭を中心とした上場企業以外では再生可能エネルギーへの投資が進んでいるため、スイス全体では4℃シナリオにあるだろうとしつつも、2℃には程遠いとの見方を示した。しかし、機関投資家の個別のポートフォリオレベルでは、気候変動対応に大きな差があり、エネルギーに占める再生可能エネルギー割合は3%から91%までに開きが、自動車に占める電気自動車・ハイブリッド車の割合も3%から100%までの開きがあった。

 ポートフォリオの投資リスク分析では、信用格付大手ムーディーズの移行・環境リスクの定義をもとに、債券投資のリスクを査定。当該リスクの高いセクターに対するエクスポージャーが20%以上もある機関投資家の全体の3分の1もあることがわかった。機関投資家の個別の状況では、エクスポージャーが一桁台から40%以上までと大きな開きがあった。

 報告書の中で、2° Investing Initiativeは、スイスの機関投資家に対し、2℃シナリオに沿うよう投資先を選択し直すよう勧めるとともに、今後世界的にシナリオ分析を促進するため、ISO(国際標準化機構)や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)に対し、標準的なシナリオ分析手法の確立を呼びかけていくとした。

【報告書】Out of the Fog

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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