欧州委員会は11月20日、男女賃金格差解消のため、2019年までの新たなアクションプラン「Action Plan to tackle the gender pay gap」を発表した。欧州委員会は目下、取締役会と中間管理職の女性比率を40%以上に上げる目標を掲げている。今回のアクションプランでは優先事項を8つ設定。EUでは、2006年7月の「雇用及び職業における男女の機会均等及び均等待遇の原則の実施に関する指令」(2006/54/EC)が現行法として機能している。欧州委員会は、同法が実効性に欠けるととして、2018年にも法改正を検討する考え。
ユンケル欧州委員長率いる現行欧州委員会は、2014年11月に組閣し、2019年で任期満了となる。全階層の女性管理職は11月1日には36%を超え、組閣時と比べ30%も向上している。また、取締役や上級管理職の女性比率も同期間に27%から35%に、中間管理職の女性比率も31%から37%に向上した。大手上場企業の取締役に限っても、女性比率は2005年の10%から2015年には22%にまで上昇した。しかし会長や社長レベルではまだ7%に留まり、CXOクラスでも6%しかいない。EUはこれを40%にまで上げるとしている。
同日、欧州委員会が発表したレポート「Gender Equality 2017」でも、調査したEU市民の90%がジェンダー平等は社会や経済にとって重要だと回答。また、80%以上は家事負担や子供のための休暇取得を男性にも求めるべきと回答した。EUでは同地位でも女性が男性より16.3%給与が低く、調査でも90%の人が「受け入れがたい」と回答。管理職の女性比率だけでなく、男女賃金格差も課題となっている。
発表されたアクションプランの優先事項8分野は、
- 男女賃金平等原則の適用改善
- 職業や業界での男女差別反対
- 「見えない天井」の撤廃
- 女性の福祉・介護負担の軽減
- 女性のスキル、努力、責任の評価向上
- 差別や偏見の可視化
- 男女賃金格差に関する認知拡大・警告
- 男女賃金格差を解消するパートナーシップの強化
経営陣の女性比率向上では、欧州委員会は以前、上場企業の取締役女性比率を40%以上と規定するEU指令案を提出したが、ドイツ、オランダ、スウェーデンが内政干渉へのおそれを理由に、またハンガリーとポーランドがイデオロギーの観点から同案に反対を示した。そこで、欧州委員会は現在、非常勤取締役に絞った突破口を模索している。
欧州委員会は今年5月、EUで上院の役割を果たす加盟国閣僚級のEU理事会に対し、上場企業の取締役女性比率も向上させるためのEU指令案を提案している。同EU指令案はもともと2012年に欧州委員会が作成。管理職の女性比率40%以上を公営企業は2018年までに民間企業は2020年までに達成することを目標とし、条文には非常勤取締役の男性比率が60%以上の上場企業は、取締役候補の基準を明確に定めた上で、女性候補の着任を優先することを義務化する内容も盛り込まれている。2018年に検討する法改正でもこの指令案は大きな争点となる。
【参照ページ】A Europe of equals: European Commission stands up for women's rights in turbulent times
【参照ページ】Commission steps up efforts to tackle the gender pay gap
【参照ページ】Women in management: Commission moves closer to its target of at least 40%
【EU指令案】Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on improving the gender balance among non-executive directors of companies listed on stock exchanges and related measures
【レポート】Gender Equality 2017
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