国際環境NGOの世界資源研究所(WRI)は8月13日、グローバルサウス(アジア、アフリカ、中南米の低・中所得国)の都市部で、家庭の水不足が想定よりも進行していることを発表した。水不足については、すでに南アフリカのケープタウンや、インドのチェンナイで発生している「Day Zero(デイ・ゼロ)」に注目が集まっている。デイ・ゼロとは水源の枯渇により、水道から水が出なくなる状態。しかし、都市単位でのデイ・ゼロの裏で、家庭単位での水不足は他の都市でも着実に進行しているという。
WRIの調査によると、2030年までに45都市、300万人が高い水リスクに晒されるとしている。水リスクの低い地域でも、水へアクセスできない住人が出ることが懸念される。同NGOは、15都市で調査を実施。約半数の世帯が水道水へ十分にアクセスできておらず、5,000万人以上が影響を受けると分析した。さらに、水道水にアクセスできる大半の世帯でも、間欠給水を行っていることも明らかになった。間欠給水とは、常時給水が実現していない給水方法。上水道の給水に時間制約を設けると、配水管の水圧を十分に確保することができず、汚水の混入による健康被害が懸念される。また、間欠給水は、屋根の上に設置したタンクからの給水を指す場合もあり、こちらも衛生問題が懸念されている。
水道水の代替として、企業が提供する給水車による水サービスが挙げられる。しかし、同サービスを利用する場合、水だけで世帯収入の四分の一程度を占めると見られ、世界保健機関(WHO)が推奨する水準の5倍から8倍の費用になってしまう。WRIは、国連持続可能な開発目標(SDGs)でも、都市部の水不足の見積もりは甘いと指摘。また、「世界人口の90%がより良い飲用水を利用できる」としていた国連児童基金(UNICEF)やWHOの2015年レポートでも、急速に都市化する現実に対応できていないとしている。
WHOのレポートでは、都市部全体における飲用水カバレッジへの投資には、5年で1,410億米ドル(約14兆円)以上かかると見積もられている。一方で、放置すれば同期間に10倍の世界的な経済損失につながると分析した。これらを踏まえ、WRIは都市部の地方政府に対し4つのアクションを提示した。
市営水道を全世帯・区画へ拡張する
利益を圧迫することが想定されるため、給水に係る企業からは望まれないとしても、全世帯・区画が市営水道水にアクセスできるよう政府が投資を行う。
間欠給水における汚物混入へ対策を講じる
正確で信頼の置ける測定や、インフラメンテナンスの改善、十分な財源の担保、より綿密な計画や管理を行う。
水アクセス向上に資する戦略を実行する
例えば、チリやコロンビアの都市では、低所得層を対象に水助成金を拠出しており、南アフリカでも各世帯に最低限の水が無料で保障される政策が実施されている。
インフォーマル居住地の改良に資する参加型の支援を行う
インフォーマル居住地から退去ではなく、当該居住地の水アクセスを改善する。インフォーマル居住地とは、現住者が法的権利をもたない、あるいは不法に占拠している土地。例えば、アジアNGOのAsian Coalition for Community Action(ACCA)は、インフォーマル居住地の改良に向けた都市開発ファンド476本を支援している。
【参考】RELEASE: Lack of Reliable and Affordable Water a Hidden Threat for Urban Households of the Global South
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