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【国際】IAHR、エクエーター原則第4版案にパブコメ提出。人権観点の補強・修正を複数提案

 人権分野の機関投資家イニシアチブInvestor Alliance for Human Rights(IAHR)は8月23日、銀行向けのプロジェクトファイナンス分野での環境・社会配慮に関する国際ガイドライン「エクエーター原則(赤道原則)」第4版(EP4)案に対するパブリックコメントを提出した。

 今回の共同書簡に参加した機関投資家の運用資産総額は1.3兆米ドル(約143兆円)。Aviva Investors、ボストン・コモン・アセットマネジメント他、キリスト教系機関投資家も多数参加した。

 IAHRは、現状のEP4案が、基本的人権について、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)や「責任ある企業行動(RBC)のためのOECDデューデリジェンス・ガイダンス」と整合しないと指摘。見直しを要請すると共に、同原則との整合に向けた修正ポイントを提案した。

指定国と非指定国区分の撤廃
 従来エクエーター原則では、市民と自然環境を守るために構築された強固な環境・社会に関するガバナンス、法体系、組織を有するとされる「指定国」と、それ以外の「非指定国」という区分を設定してきた。この区分は、同原則の署名機関がプロジェクト実施時に遵守しなければならない環境・社会基準の内容に影響し、米国や日本を含む「指定国」では、当該国の法令基準を満たせばよしとされている。

 同区分指定は、今回のEP4案にも存続しており、IAHRは、この内容が「人権の尊重をグローバルで統合する」というEP4の前文と矛盾すると指摘。指定国であったとしても、グローバルレベルでの人権水準を適用すべきと主張した。また、EP4案の原則3は、プロジェクト固有のリスクへの対処にIFCの「環境と社会の持続可能性に関するパフォーマンス基準」を用いているが、これでは不十分だとし、UNGPやOECEデューデリジェンスを採用すべきとした。

ファイナンス規模の閾値の撤廃やバリューチェーン全体の考慮
 ファイナンス規模に閾値を設けることなく、UNGPのスコープと整合性をとる必要があるとした。同様の指摘は、フランスのシンクタンクThe Shift Projectからも行われている。

 さらにIAHRは、バリューチェーン全体への影響の観点から、エクエーター原則の全文や言葉の定義についても修正が必要だと指摘。現行案ではプロジェクトの事業活動やバリューチェーン全体に悪影響を与える可能性があるとした。

エクエーター原則協会(EPA)対する苦情申し立ての仕組導入
 IAHRは、苦情通報制度を導入する事はエクエーター原則の評価を高め、継続的な学習の機会を提供するのに役立つとして、UNGPの原則30および31に倣い、苦情申し立ての仕組みを盛り込むことを要請した。同様の要請は、国際NGO74機関からも提出されている。

【参考】【国際】国際NGO74機関、エクエーター原則第四版案にパブコメ提出。協会への苦情通報制度導入を要請

ILOの条約や先住民族の権利に関する国際連合宣言等に対応した人権基準の盛り込み
 EP4案の原則5では、同原則の署名金融機関を指す「EPFI」にとって重要なステークホルダーとして労働者を挙げているが、EPFIやそのクライアントのいずれにおいても、結社の自由や団体交渉権等の労働者の権利の考慮は義務化されていない。

 IAHRは、First Peoples Worldwideが提唱する先住民の権利に関する推奨事項の採用をEPAに要請。「自由で事前の、十分な情報を与えられた上での合意(FPIC)」に関連する第四版案の改善を求めた。

既存の人権報告フレームワークの採用
 投資家は、投資判断とエンゲージメントの優先順位の報告に向けて、包括的かつ比較可能な企業データを必要するとして、UNGP報告フレームワーク等の人権報告フレームワークの採用を要請。既存のフレームワークに準じることで、レポート作成の非効率性や不整合を軽減し、人権に係る情報開示の期待を高めることができるとした。

気候変動対応観点での情報開示
 気候変動に伴う人権への重大な影響を勘案し、EP4版の前文において1.5℃目標を掲げるパリ協定との整合を宣誓することを推奨した。また、現行案の原則2の記載は、企業全体で一貫して比較可能な気候データを投資家に提供するという気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告にそぐわないとと指摘した。

【参照ページ】Investors with US$1.2 Trillion Submit Human Rights Recommendations to Equator Principles Review Process
【参照ページ】Designated Countries

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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