国際環境NGO世界資源研究所(WRI)は4月21日、インドでの再生可能エネルギーにおける外部効果も含めたインパクト評価を実施したワーキングペーパーを発表。非常に高い収益率を持つことを明らかにした。
インド政府は、2030年までに再生可能エネルギーの割合を40%に引き上げる目標を掲げており、中間目標として、2022年までに175GWの再生可能エネルギーを国内の電力網に組み込むことを目指している。内訳は太陽光(100GW)、風力(60GW)、バイオマス(10GW)、小水力(5GW)。現在の電力構成は石炭火力発電が54%を、再生可能エネルギーが23%を占める。
WRIは、一般的に再生エネルギー技術を導入する意思決定の基準が、投資コストや投資収益を考慮する「内部収益率」に依存する傾向にあることを指摘。持続可能な開発には市場の対象に含まれないさまざまな要因(健康維持へのコスト、雇用の創出など)を考慮する必要があると強調。そこで今回は、より包括的な数値を反映させるために「経済収益率」を採用し、再生可能エネルギーが与える影響を、「健康」「水」「土地」「気候変動」「雇用」「電力保護」の6観点から評価した。
その結果、経済収益率が最も高いとされる再生可能エネルギーは、地上設置型太陽光発電(33.93%)だった。次に屋上設置型太陽光発電(25.53%)、風力発電(19.65%)と続き、バイオマス発電と小水力発電は、設備の耐久期間に対し、維持費や運営コストが上回るとし最終的な分析に至らなかったと発表した。
健康面への影響では、太陽光発電や風力発電は、石炭電力発電と異なり粒子状物質を放出しないため、環境的にも健康的にも良いと評価。WRIは、石炭の燃焼で放出される粒子状物質による大気汚染を問題に挙げ、石炭火力発電に起因した有害物質関連の医療費は2013年のインドの国内総生産(GDP)の約7.7%と推定、毎年140万人のインド人が死亡していることを指摘した。
雇用面への影響では、政策に基づく再生可能エネルギーの導入は、より多くの雇用を生み出すとし、また女性の雇用機会も増加する可能性を示した。一方で、大規模な再生可能エネルギーのプロジェクト(地上設置型太陽発電や陸上風力発電など)を導入した場合には、土地を巡って食料生産と農業収入に影響を与える可能性があり、また森林減少の増加、生態系の劣化、および生物多様性の損失を導く場合があることも指摘した。
WRIは、意思決定の過程に本フレームワークを導入することで、社会的および経済的コストを最小限に抑えることができ、また持続可能な開発目標(SDGs)との整合性を適切に説明できる利点があるとして、活用することを促した。
【参照ページ】Assessing the Sustainable Development Impacts of Renewable Power Technologies in India: An Economic Returns Framework
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