環境省所管の国立環境研究所の「物質フロー革新研究プログラム」研究チームは6月4日、鉄鋼、アルミニウム、銅、亜鉛、鉛、ニッケルの6種の主要金属を対象とし、世界規模でのシミュレーションモデルを構築。パリ協定達成での金属生産・利用の影響を解析した。研究結果は、環境学分野の国際学術誌「Global Environmental Change」に5月21日に掲載された。
今回開発したシミュレーションモデルは、中・低所得国の経済成長を反映し、全所得グループ国が21世紀中に同量の金属蓄積量に収束することを想定。金属は世界の排出量全体の約10%を占め、対象とした6金属は、全ての金属および半金属生産に伴う二酸化炭素排出量の約95%を占める。大規模な排出削減が不可欠な分野。
シミュレーション解析の結果は、天然鉱石からの生産量は全ての対象金属において2030年までにピークに達し、少なくとも2050年までにはスクラップからのリサイクル生産量が天然鉱石からの生産量を上回ると推計された。しかし、利用可能なスクラップには量的限界があるため、21世紀後半にかけて生産量は徐々に減少し続ける見込み。結果として、蓄積量としての一人当たり金属利用可能量はシナリオ平均で約7tに収束するという。
一方、現在、日本を含む高所得国が利用している一人当たり約12t。低所得国は同1tで、世界平均は同4t。すなわち高所得国では、今よりも一人当たりの金属利用可能量は大きく減少する。結果、リサイクル技術開発と共に、資源効率の向上も必要不可欠ということがわかった。
(出所)国立環境研究所
【参照ページ】炭素制約が世界規模での金属生産と利用にもたらす影響を推定
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