IFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は12月15日、策定中の気候関連開示基準(S2)で、スコープ3排出量開示の指針を決定した。ISSBは10月、スコープ3排出量の開示義務化方針を決定している。
【参考】【国際】ISSB、スコープ3排出量開示義務化決定。シングルマテリアリティの採用を確認(2022年10月31日)
今回の決定では、スコープ3排出量の算出は、GHGプロトコルのスコープ3ガイダンスに基づくことを確認。その上で、GHGプロトコルでは、直接測定と推定の2つの手法を認めていることを踏まえ、ISSBとしては直接測定が望ましいとしながらも、推定値を使うことも可とし、実際には推定値を使うケースのほうが多くなるだろうとの見方も伝えた。
一次データ(プライマリーデータ)と二次データ(セカンダリーデータ)の優先順位や、粒度、データ鮮度の優先順位の考え方については、優先順位を設定する上での4つの観点を提示。具体的には「直接測定データ」「一次データ」「タイムリーなデータ」「検証済みのデータ」の4つ。最終的な判断は報告企業に委ねられている。
スコープ3報告の対象とするカテゴリーについては、セクター毎のガイダンスを策定していく方針も固めた。先行して、金融セクターに関しては、カテゴリー15を含めることで合意した。
また今回の会合では、スコープ2排出量についても、マーケット基準と地域基準の双方の算出を義務化することでも合意した。
さらに、ISSBは、S2の発効日から最低1年間は企業に遵守の猶予を与える「救済措置」を設定することでも合意。また、決算期が異なるサプライヤー企業から提出された排出量等を活用する場合に、月ずれをしていても問題がないことも確認した。
今回の会合では、気候変動以外のアジェンダの議論優先順位に関し、生物多様性・生態系、人的資本、人権、IASBとの報告との連結性の4つを優先していくことを決めた。人的資本では、気候変動と生物多様性の双方での公正な移行(ジャスト・トランジション)の観点も盛り込まれる。
ISSBは12月14日、「サステナビリティ」の概念には、気候変動と生物多様性の双方、及びその2つを実現する公正な移行(ジャスト・トランジション)を実現する人的資本の観点が色濃く反映され、バリューチェーン全体にわたって説明を求めていくとの考え方をあらためて表明。さらに、単なる活動や方針ではなく、財務価値創造との関連性の説明も重視するとした。
【参照ページ】ISSB announces guidance and reliefs to support Scope 3 GHG emission disclosures 【参照ページ】ISSB describes the concept of sustainability and its articulation with financial value creation, and announces plans to advance work on natural ecosystems and just transition