国連責任投資原則(PRI)は7月31日、欧州委員会が採択したEU企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づく欧州サステナビリティ報告基準 (ESRS)を歓迎するとともに、開示義務内容を緩和したまま最終決定したことに苦言を呈した。8月16日に文書を公表した。
【参考】【EU】欧州委、ESRSを採択。EFRAGはセクター別ESRS策定に着手。ISSBとの相互運用性確保も(2023年8月3日)
ESRS制定で、欧州委員会が2022年11月に発表して原案では、幅広い項目について開示義務を設定。しかし6月に発表した最終案では、大幅に義務要件を緩和。その直後にPRI等は、「サステナブルファイナンス開示指令(SFDR)との不整合」「マテリアリティ自己評価や開示の一部任意化は、サステナビリティ報告の精度を低下させる」の2つを挙げ、機関投資家のSFDR上の義務が果たせなくなると修正を要求していた。しかし欧州委員会は応じなかった。
【参考】【EU】欧州委、ESRS原案を発表。要件を大幅緩和。PRI等の機関投資家団体は反発(2023年7月13日)
PRIは今回の声明の中で、ESRSの制定を歓迎。投資家にとってアクセスできるデータの幅が増えたとした。特に、マテリアリティについての開示責任が強化されたことや、気候変動をマテリアルとしない場合にはその説明を課すルール等は、投資家にとって重要な情報になると指摘した。
一方、CSRDの最終案の修正をしなかったことについては、投資家がSFDR上の義務を果たすために必要なデータを担保しないものになったおそれがあると言及。これにより、欧州グリーンディール、EU生物多様性戦略、EU気候法の目標を達成するための資金動員が不十分になるおそれがあるとの見解も示した。
そのため、欧州委員会に対し、2026年のCSRDレビューの際に、SFDR上で義務化している内容について、ESRS上も開示義務化するようあらためて要請した。同時に、それまでの間、CSRDの開示義務を負う企業に対し、マテリアリティ評価を着実に実施することを求める堅固で明確で包括的なガイダンスを発行するよう求めた。これによりマテリアルな項目について企業が確実にデータ開示することを促す考え。
またEUサステナブルファイナンスの枠組み全体が一体的なものであることにも触れ、政策の一貫性を強く求めた。PRIは引き続き欧州委員会へのエンゲージメントを続けていく考え。
【参照ページ】PRI reaction statement and quote on adoption of ESRS 1 and ESRS 2
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