
企業栄養評価の国際団体「栄養アクセス・インデックス(Access to Nutrition Index:ATNI)」、国際環境NGOプラネット・トラッカー、栄養改善のための グローバル・アライアンス(GAIN)の3者は6月25日、機関投資家に向け、健康的な食品ポートフォリオを持つ食品企業への投資収益性が高いことを示す分析レポートを公表した。
同レポートでは、世界の食品メーカー20社の食品ポートフォリオとEBITマージンを分析した。対象となったのは、ATNIの2018年と2021年のグローバル・インデックスで評価対象となった20社。具体的には、ザ・コカ・コーラ・カンパニー、ペプシコ、ネスレ、ダノン、ユニリーバ、ゼネラル・ミルズ、キューリグ・ドクターペッパー、モンデリーズ・インターナショナル、ケラノバ(旧ケロッグ)、キャンベルスープ、コナグラ・フーズ、クラフト・ハインツ、グルポ・ビンボ、BRF、伊利実業集団、蒙牛乳業、康師傅、味の素、明治ホールディングス、サントリー食品インターナショナル。
ATNIは今回、世界中の日常食は、健康的で持続可能な食生活のための最低基準を下回り続けていると指摘。不健康な食生活は疾病、障害、早死の世界的な主要因であり、非感染性疾患(NCDs)の上位2つの危険因子の1つであることに加え、労働生産性の低下やコストの増加を通じて雇用者に負担をかけ、社会にも大きな負担を強いていると言及した。機関投資家に対し、栄養課題がシステミックリスクになっていることを伝えた。
その上で、EBITマージンの比較分析結果を紹介した。提供商品群の多い企業を対象に分析すると、健康的な食品ポートフォリオを持つ企業のEBITマージン(15.2%)は、同業他社(13.4%)よりも高いことおがわかった。
反対に、提供商品群の少ない企業では、健康的でないポートフォリオを持つ企業のEBITマージン(16.7%)が、健康的なポートフォリオを持つ企業の10.4%を上回った。但し、同結果は、ソフトドリンクの販売から多額の収益を生み出しているザ・コカ・コーラ・カンパニーとキューリグ・ドクター・ペッパーの2社の影響を受けているとした。
20社のうち、栄養課題を決算説明会で取り上げている企業は7社にとどまった。また、20社のうち、アニュアルレポートで栄養に関する目標を開示している企業はコカ・コーラとグルポ・ビンボの2社のみで、ヘルススター評価(HSR)の実施を認めているのもダノンとグルポ・ビンボのみにとどまった。
これらを踏まえ、機関投資家に対し、5つの行動を要請した。
- 規制による変更を余儀なくされる前に、食品ポートフォリオの健康性を改善するよう企業に働きかける。
- 一貫性があり、ヘルススター評価(HSR)システムまたは関連する政府推奨の製品プロファイリングシステム(NPS)を使用した食品ポートフォリオの分析を企業に求める。
- 進捗状況をモニタリングできるよう、企業に対し、栄養関連の割合目標して設定し、KPIを公表するよう求める。
- 特定の企業の食品ポートフォリオの健康性の評価を投資分析に組み込む。
- 栄養を機会としてより重視するよう奨励し、従業員の労働生産性の低下や健康関連規制の強化等の点で、栄養関連のリスクを軽減するための具体的な措置を企業が講じていることを確認するために、食品会社と協力する。
- 他の投資家と共に、規制当局や政策立案者に対し、栄養に関連する強制的な情報開示制度の実施や、企業を奨励するための規則やインセンティブの導入を促す。
- ESGデータプロバイダーと連携し、栄養指標をフレームワークやスコアリングに含める。
ATNIは同時に、「健康的な食品」の定義確立作業も進めている。4月には、加工食品の分類を改善するよう求めるディスカッションペーパーを発行。加工食品の中でも、工業プロセスで生産された合成原料を用いたものを「超加工食品(UPF)」と定義するよう提唱した。またUPFの健康影響に関するランダム化比較実験(RCT)を実施し、悪影響を特定していく考えも示した。
【参照ページ】New report investigates materiality of nutrition
【参照ページ】ATNI Publishes Discussion Paper on Classification of Processed Foods: Opportunities and Gaps
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