
11月25日から12月1日まで韓国・釜山で開催されていた国際プラスチック条約採択に向けた政府間交渉委員会第5回会合(INC-5)は、合意に至らず、2025年の再開会合での交渉の出発点となる「議長文書」を発表し、閉会した。正式には閉会ではなく「中断」としている。
国際プラスチック条約に向けては、2022年3月の国連環境総会で、制定することを採択。その後、政府間交渉委員会の第1回会合(INC-1)が2022年11月にプンタ・デル・エステで、INC-2が2023年6月にパリで、INC-3が2023年11月にナイロビで、INC-4が2024年4月にオタワで開催されてきた。今回の第5回会合を最終会合にする予定だった。
【参考】【国際】国連環境総会、14の決議を採択。プラスチック汚染撲滅に向けて国際条約制定へ(2022年3月11日)
【参考】【国際】国際プラスチック条約企業連合、釜山への架け橋宣言支持。政府にプラ対策強化要請(2024年10月26日)
今回の第5回会合には、170カ国以上の政府が参加し、400以上の団体がオブザーバーとして参加。国際プラスチック条約の最終採択を目指し、条約案を土台とした合意交渉が続けられたが、まとまらなかった。パナマ政府が提出したプラスチック生産量の上限設定案に100カ国以上の政府が賛成したが、サウジアラビアを代表とする産油国等一部の国が生産量規制に反発し、プラスチック廃棄物に的を絞ることのみの合意にこだわった。また、先進国から発展途上国への資金協力でもまだ未合意に内容が多数ある。
閉会に際し示された議長文書には、条約案の最終形態として、合意前の途中段階の条文が残されている。その中には、各種の使い捨てプラスチックやマイクロビーズを含む消費財や化粧品の段階的廃止期限を設ける附属書もある。
合意に至っている内容では、政府が国内産業政策としての措置を取る分野として、
- プラスチック製品設計において、サーキュラーエコノミー・アプローチを採用
- ライフサイクルアセスメント(LCA)と入手可能な最善の科学に基づき、環境的、 経済的、社会的、人間の健康的側面、廃棄物削減と再利用の可能性、入手 可能性、入手しやすさ、手頃な価格を考慮し、製品、技術、サービスを含む、持続可能でより安全な代替品と非プラスチック代替品の研究、イノベーション、開発、利用を促進
- マイクロプラスチックを含むプラスチックの環境中への放出と漏出を予防し、削減し、可能な場合には撤廃
- 海洋環境における、放棄、紛失、その他の方法で廃棄された漁具を含むがこれに限定されない漁業活動によるプラスチック汚染を予防し、削減し、可能な場合には撤廃
- プラスチック廃棄物の安全な取り扱い、分別、収集、輸送、保管、リサイクル、処分(エネルギー回収を含む)のための適切なシステムと災害に強いインフラを国および地方レベルで確立
- プラスチック廃棄物の回収率とリサイクル率を向上させるための目標とターゲットを国レベルで設定
- 公正な移行(ジャスト・トランジション)
- 同条約を実施するための国家計画の策定と締約国会議への適期的な報告
対立が続いたプラスチック生産量の上限設定案については、世界目標を設定する案が掲げられている。指標としては、プラスチックの生産、消費、使用のどの段階にするかでも交渉が続いている。また目標設定水準に関しても、増加を抑制し現状を維持なのか、削減にまで踏み込むかも両論併記の状態。削減とした場合も、どこまで野心的にするかは未決。
同交渉委員会は、後日、第5回第2会合(INC-5.2)を開催することで合意したが、まだ日程や場所は決まっていない。今後、国連環境計画(UNEP)が日程と場所の調整に入る。
【参照ページ】Plastic pollution negotiations adjourn with new text and a follow-up session planned
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