
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は6月17日、欧州委員会が2023年7月に採択した土壌モニタリング指令案に関し、交渉の方向性で一致した。今後、欧州委員会及び欧州議会との協議に入る。
欧州委員会は2021年11月、欧州グリーンディール戦略を実現するための施策として、EU土壌戦略を発表。土壌の保護、回復、持続可能な利用のための具体的な方策を含む枠組みを設定し、任意もしくは法的拘束力のある複数の方策を提示した。それを基に、2023年に欧州モニタリング指令を制定する政策を掲げていた。
【参考】【EU】欧州委、世界的な森林保全、廃棄物輸出、土壌健全で新たな戦略発表。規制強化へ(2021年11月18日)
土壌モニタリング指令の狙いは、大気汚染、海洋汚染、水系汚染と同様に、土壌の健全性を確保するためのモニタリングを法制化するもの。2050年までに全ての土壌を健全な状態にすることを目標としている。健全な土壌は、食品の95%の基盤となっており、世界の生物多様性の25%以上を育んでいる。しかし、土壌は限られた資源ながら、EUでは60%以上の土壌が健全な状態にないとしている。
EU理事会は今回、土壌の健全性をモニタリングすることをEU加盟国に義務化、持続可能な土壌管理のための指針を示し、土壌汚染が健康及び環境にとって許容できないリスクをもたらす状況に対処することを目指す。
具体的には、EU加盟国は、まず自国の領土内のすべての土壌をモニタリングし、健全性を評価することを制度化。その上で、EU全域の当局及び地主が、持続可能な土壌管理の実践やその他の適切な対策を講じることができるようにする。EU加盟国は、EU共通のメソドロジーに基づき、モニタリングのためのサンプリング地点を決定する。土壌サンプル評価のための最低限の品質要件も定める。EU加盟国が、既存のデータやモニタリングシステムを利用できるようにする柔軟性も盛り込まれる。
土壌の健全性評価では、土壌記述子(物理的,化学的,生物学的パラメータ)の概念を採用。地域の状況に適応するため、土壌の健全性を評価するためのより二重の目標水準を設ける。まず、長期目標を反映したEUレベルでの拘束力のない持続可能な目標値。もう一つが、健全な土壌の状態を実現するための優先順位付けと段階的な対策を実施するため、各土壌記述子項目に対して加盟国レベルで設定される運用トリガー値。EU加盟国は、同指令発効後5年以内に、同指令に規定された持続可能な土壌管理の原則を考慮し、持続可能な土壌管理に関する慣行を定義する。
土地利用のための土地取得については、2050年までに土地取得をネットゼロにすることを長期目標に設定。インフラ開発や宅地開発による土壌被覆と土壌破壊に対処する。土壌被覆と土壌破壊は生物多様性破壊や生態系サービス喪失の原因とみなされている。ただし、住宅やエネルギー移行を目的とした土地利用計画決定を可能とする柔軟性はもたせる。
汚染サイトに関しては、汚染された可能性のある場所を特定するために、汚染された可能性のある活動の国別リストを作成する。リスクアプローチを採用し、潜在リスク、社会経済的背景、現在および計画中の土地利用を考慮し、対策の優先順位を決定する。
【参照ページ】Soil monitoring law: EU on the pathway to healthy soils by 2050
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