カカオ産業のサステナビリティ向上を目指す世界カカオ財団(WCF)は11月16日、気候変動枠組み条約ボン会議(COP23)の場で、新たなイニシアチブ「Frameworks for Action」の設立を発表した。世界のカカオの3分の2を生産するコートジボワールとガーナでカカオ栽培による熱帯雨林伐採を食い止め、国立公園を守る。熱帯雨林を保護することで大気中の二酸化炭素を固定化するにもつながり気候変動緩和にも貢献できる。
過去10年で、コートジボワールでは約210万ha(青森県と秋田県の足した面積)、ガーナでは82万ha(兵庫県の面積)の熱帯雨林が消失。その結果、コートジボワールではかつて国土の25%が熱帯雨林だったが、現在は4%未満にまで激減している。コートジボワールとガーナの熱帯雨林消失のうち4分の1がカカオ生産によるとものとみられている。カカオ生産により熱帯雨林破壊が進む背景には、現地のカカオ生産農家の間で、熱帯雨林を焼き払った土地でカカオを栽培したほうが実りが良いと信じられているという事情がある。
【参考】【西アフリカ】カカオ栽培により熱帯雨林が大規模消失。メーカー・流通企業の課題多い(2017年10月1日)
このままのペースで熱帯雨林破壊が進めばカカオ生産は持続可能でなくなってしまう。すると現地のカカオ農家の所得や雇用にも大きなダメージを与えることになる。そのため、熱帯雨林破壊を伴わない持続可能なカカオ栽培が、カカオを原料とするチョコレート産業を中心に大きな経営課題になっている。
今回のイニシアチブに参加するのは、チョコレート世界大手米マース、米モンデリーズ・インターナショナル、米ハーシー、米ギタード、米Blommer Chocolate Company、スイスのネスレ、スイスのバリーカレボー、ベルギーのゴディバ、伊フェレロ、仏Cemoi、デンマークのToms International、日本の明治、ニュージーランドのWhittaker's、カナダのCococo Chocolatiers、食品商社世界大手米ゼネラル・ミルズ、米カーギル・カカオ&チョコレート、シンガポールのオーラム・カカオ、スイスECOM Group、農業大手仏Touton、英小売大手セインズベリー、スイス育苗大手Tree Globalの21社。参加企業で世界のカカオ流通の80%以上を占める規模。
コートジボワールとガーナの両政府も、熱帯雨林地域の土地利用状況地図の更新やカカオ農家や地域社会の経済状況把握等、森林保護管理制度の向上をすでに開始している。今回のイニシアチブは、企業がカカオ流通の認証・モニタリング制度や衛星画像解析等を導入し、サプライチェーンの透明性を上げることで、政府の取組を後押しする。さらに政府と協働し、国レベルの透明性向上フレームワークなどの構築も支援していく。企業アクションの検討では、現地の農家やコミュニティと十分に対話していく方針も確認された。同時に企業はフレームワークに沿う具体的アクションの結果と進捗状況を毎年開示していくことでも合意した。
今回のフレームワークでは、「森林保護と再生」「持続可能なカカオ生産と農家の生活基盤整備」「コミュニティ・エンゲージメントと社会的インクルージョン」の3つを主なテーマとして掲げている。
- 森林保護と再生:国立公園や国立保護区の保護、都市部の緑地化、特にカカオ農家の侵入によって荒らされた森林保護区の再生
- 持続可能なカカオ生産と農家の生活基盤整備:持続可能なカカオ生産の集約化と生産性・農家の収入を増加させるための生産の多角化
- コミュニティ・エンゲージメントと社会的インクルージョン:コミュニティ全体を巻き込み農家に社会的なセーフテティネットを提供
【参照ページ】Two-thirds of Global Cocoa Supply Agree on Actions to Eliminate Deforestation and Restore Forest Areas
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