EU理事会、欧州議会、欧州委員会の3者は12月5日、サステナブルファイナンス・アクションプランの柱の一つ、EUタクソノミーで政治的合意に達した。6月に欧州委員会が最終案を発表して以降、3者での協議が続いていた。今後、加盟国の常駐代表委員会(COREPER)での審議に移り、それが通れば、欧州議会、EU理事会での正式な立法プロセスに入る。
【参考】【EU】欧州委TEG、サステナブルファイナンス「タクソノミー」等4分野最終発表。CCS付石炭火力、ガス火力、原発除外(2019年6月19日)
今回の決定では、反対意見が出たタクソノミーの下での機関投資家のポートフォリオ情報開示義務についても、最終的に妥結。報道によると、機関投資家は、全ファンド商品において、タクソノミー分類を満たす投資先企業の割合を開示が義務化される方向となった。
開示しなければならない種別としては、「サステナブル」「トランジション」「イネーブリング」の3つを設定。サステナブルは、タクソノミーの内容。トランジションは、鉄鋼等、まだ二酸化炭素排出量ゼロの手法が確立していない分野での現状のベストプラクティスの内容。イネーブリングは、二酸化炭素排出量ゼロを支えるための分野で、例えば風力タービン製造等が該当するという。EUは、2050年までに二酸化炭素ネット排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」を掲げており、タクソノミーはそれを実現するための分野と明確に位置づけられた。
今回、機関投資家への開示義務が決まったことで、大企業も影響を受けることになる。欧州投資信託協会(EFAMA)は、今回の議論の中で、投資先企業の開示がなければ機関投資家が開示できないことを強く主張。結果的に、タクソノミーに基づく実質的な情報開示義務が企業側にも課されることになる。
もう一つの大きな争点は、原子力発電の扱い。原子力発電は、二酸化炭素排出量を大きく減らせるが、事故リスクが高い。欧州委員会の最終案では、原子力発電はタクソノミーから除外され、EUの2050年カーボンニュートラル目標に則さないと判断された。しかしその後、原子力発電をタクソノミーに入れたいフランスと、入れたくないドイツ、オーストリア、ルクセンブルクが衝突。欧州議会で議席数第4位の欧州緑の党も、原子力発電に反対した。
結果、原子力発電については、議論が持ち越しとなった。2020年に専門家会合を開催し、サステナブルファイナンスの「無害(Do Not Harm)」原則の観点と照らし合わせ、原子力発電の「無害性」を判断。無害と認められなければ、タクソノミーから除外される。
国連責任投資原則(PRI)のフィオナ・レイノルズCEOは、今回の政治的合意に対し、強い歓迎の意を表明した。
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