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【イギリス】政府、CO2ゼロと安価な電力料金の両立でエネルギー政策骨子発表。化石燃料対外支援禁止、軍用機でのSAF使用も

 英ビジネス・エネルギー・産業戦略省は12月14日、2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を実現しつつ、電気料金を低くしていくための新たな施策を「エネルギー白書」の中で示した。雇用も22万人創出する。

 今回の戦略は、ボリス・ジョンソン首相が11月に発表した「グリーン産業革命のための10重点施策(Ten-Point Plan)」に基づくもの。産業振興と雇用創出、生活費削減をしつつ、鉱工業、輸送・交通、不動産での二酸化炭素排出量を10年間で2.3億t削減する。

【参考】【イギリス】首相、2030年ガソリン・ディーゼル新車販売禁止方針表明。脱炭素に向け10重点施策も発表(2020年11月19日)

 今回の施策の骨子は全部で13ある。

  • 電源開発、炭素回収・貯留(CCS)、水素、住宅省エネ修繕等で10年間で22万人の雇用創出
  • 熱・交通燃料の転換、電化、再生可能エネルギー供給量増等でのエネルギー構造の転換
  • 新規契約企業の方が電気料金が安く設定される業界の「ロイヤルティ・ペナルティ」慣行からの脱却や小売電気事業の切替ハードルの削減等での電気料金の引き下げ
  • 交通燃料と熱エネルギーの低炭素化。2030年代に大半の電源を脱炭素化
  • EUよりも厳しい英国の二酸化炭素排出量取引制度(UK ETS)の2021年1月開始
  • 新規原子力発電所建設向けの資金動員を促す「規制資産ベース(RAB)」モデルの実装検討
  • 2030年までに洋上風力発電を40GW。そのうち浮体式洋上風力発電を1GW
  • 2030年までに工業地帯4ヶ所でのCCS実装に10億ポンド支出。2040年までに完全脱炭素化工業地帯を1ヶ所以上で実現
  • 水素エコノミーを2030年までに5GW。水素ファンドから2.4億ポンド支出
  • EV充電バッテリーを家庭、路上、高速道路等への整備に13億ポンド支出。バッテリー量産化等へのEV化支援に1億ポンド支出
  • 旧式住宅の省エネ化修繕に67億ポンド支出。修繕補助金や「ワーム・ホーム住区スキーム」適用75万世帯への毎年150ポンドの補助金を2026年まで延長
  • 住宅設備導入で2030年代中頃までに低炭素型以外のものを禁止
  • 北海の石油・ガス開発従事者をCCSや水素産業等の新産業に雇用転換することを支援

 今回示された施策のうち、雇用に関連するものは、雇用政策として打ち出されている2021年3月までの2,800億ポンドの予算を活用する。電気料金改革では、契約者がより安い電気料金プランの恩恵を享受できるようにするための政策案を2021年春までに固める。

 また対外政策では、ジョンソン首相は12月12日、気候野心サミットの中で、海外の化石燃料関連プロジェクトに対する英政府としての支援を禁止することを表明した。これには、新規石油開発、天然ガス関連プロジェクト、石炭・石油・ガス火力発電に対する開発援助、輸出金融、貿易振興等の一切が含まれる。英国はこれまで貿易振興や輸出禁輸で210億ポンドを支援してきたが、政策を全面変更する。但し、英国輸出信用保証庁(UKEF)は、すでに建設着工しており、再生可能エネルギー拡大に向けたアクションを拡大している場合は、例外的に支援の申請を続けるという。

 さらに、英環境・食糧・農村地域省、英外務・英連邦・開発省、英環境庁の3者も同日、国内外での気候変動適応に関する施策を発表した。森林や泥炭地保護のための「気候のための自然基金」に6.4億ポンドを拠出するともに、「グリーン・リカバリー・チャレンジ・ファンド」からも、自然環境型ソリューション・プログラムに対し8,000万ポンドを拠出する。洪水対策や海岸侵食の対策ロードマップも策定し、2027年までに対策費として52億ポンドを投ずる。

 気候変動適応での対外支援では、発展途上国の気候変動対策支援プログラム「国際気候金融(IFC)」に2026年までの6年間で以前の計画の倍となる116億ポンドを拠出。リスクアプローチでの早期アクションを測る国際パートナーシップ「Risk-informed Early Action Partnership(REAP)」も支援する。後発発展途上国での気候変動適応では、「Coalition for Climate Resilient Investment」「LIFE AR」等のプログラムを通じて支援を行い、9月に開催された国連生物多様性サミットで発足した「Leaders’ Pledge for Nature」に基づき、自然環境ソリューション型の対策も促進する。

 これらの一環として、英環境・食糧・農村地域省は、「グリーン・リカバリー・チャレンジ・ファンド」の第1次案件として、イングランド地域で、森林再生や森林保護のプログラム68件に合計4,000万ポンドを支給することを決定。支援対象の総面積は300haで、植林は80万本。2021年には第2次案件も採択する。

 英国防省も12月12日、11月に施行された国防省の新たなジェット燃料基準により、戦闘機F-35、戦闘機ユーロファイタータイフーン、ヘリコプター「ワイルドキャット」等の軍用機での持続可能なジェット燃料(SAF)使用比率を最大50%にまで引き上げることが可能との考えを表明した。SAFの原料としては、油脂、木材廃棄物、アルコール、砂糖、家庭廃棄物、バイオマス、藻等を挙げた。国防省の試算では、含有率を30%にすることで、二酸化炭素排出量を18%削減できるという。

【参照ページ】Government sets out plans for clean energy system and green jobs boom to build back greener
【参照ページ】PM announces the UK will end support for fossil fuel sector overseas
【参照ページ】UK sets out ambitious approach to strengthening climate adaptation and resilience ahead of COP26
【参照ページ】800,000 trees set to be planted as Green Recovery Challenge Fund projects announced
【参照ページ】Sustainable fuels to power RAF jets

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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