2050年までのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットする金融機関イニシアチブの連合体「ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)」が11月3日、正式に発足した。国連気候アクション・ファイナンス特使を務めるマーク・カーニー元イングランド銀行総裁が、主要メンバーグループ(Principal Group Members)の議長を務めることも発表された。
【参考】【国際】マーク・カーニー・イングランド銀行総裁、国連気候アクション・ファイナンス特使に就任(2019年12月5日)
GFANZは、個別に発足した金融機関のアンブレラ組織として運営される。構成機関は、アセットオーナーのNet-Zero Asset Owner Alliance(NZAOA)、運用会社のNet Zero Asset Managers(NZAM)、銀行のNet-Zero Banking Alliance(NZBA)、損害保険会社Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)、金融サービスプロバイダーのNet Zero Financial Service Providers Alliance(NZFSPA)、投資コンサルタントのNet Zero Investment Consultants Initiative(NZICI)、機関投資家横断の「パリ協定と整合した投資イニシアチブ(PAII)」。
【参考】【日本】生保3社、Net-Zero Asset Owner Allianceに新規加盟。世界53機関、日本4社に(2021年10月16日)
【参考】【国際】NZAM、加盟運用会社が128社に。運用会社資産の50%をカバー。三井住友トラストAMも(2021年7月7日)
【参考】【日本】三井住友トラストHD、Net-Zero Banking Alliance加盟。日本3社目。世界では81社(2021年10月21日)
【参考】【国際】UNEP FI、保険引受でNet-Zero Insurance Alliance(NZIA)発足。8社が創設企業(2021年7月12日)
【参考】【国際】ネットゼロ・金融サービスプロバイダー・イニシアチブ(NZFSPA)発足。17社が初期署名(2021年9月23日)
【参考】【国際】ネットゼロ・投資コンサルタント・イニシアチブ(NZICI)発足。12社が初期署名(2021年9月21日)
【参考】【国際】IIGCC、ネットゼロ投資フレームワーク策定。すでに920兆円の投資家がコミット。世界展開へ(2021年3月12日)
これらの機関には、合計で45ヶ国450機関以上が加盟。運用資産総額は130兆米ドル(約1.5京円)にもなる。今後30年間でカーボンニュートラルに必要な資金は、100兆米ドル(約1.1京円)とも言われており、重要な資金源となる。第26回国連気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)で2人が任命されている「国連ハイレベル気候行動チャンピオン」がVivid Economicsに委託した調査では、必要資金の70%が民間セクターが資金源になることが可能としている。
GFANZの加盟機関は、「Race to Zero」の基準に準拠した事業運営が義務付けられている。具体的には、スコープ3を含め2050年カーボンニュートラルを達成するための科学的根拠に基づくガイドラインの活用、2030年目標で50%のカーボンニュートラル化を達成、トランジション戦略の策定・開示、透明性の高い進捗状況の開示、オフセットの使用では厳格な基準に準拠。
GFANZの運営では、最上位機関の「Principal Group Members」には、カーニー議長の他、委員として、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、HSBC、ナットウエスト銀行、サンタンデール銀行、バンコロンビア、マッコーリー・グループ、KCBグループ、PKA、アクサ、アリアンツ、AVIVA、第一生命ホールディングス、ブラックロック、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)、Generation Investometn Management、デービッド・ロックフェラー基金、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)の各CEOと、国連ハイレベル気候行動チャンピオンのナイジェル・トッピング氏が就任した。
実務運営母体となるステアリング・コミッティーには、Principal Group Membersの構成機関の他、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、IIGCC、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)からも委員が加わる。
さらにGFANZのアンバサダーには、国連気候アクション・ソリューション特使のマイケル・ブルームバーグ氏、国連イノベーティブ・ファイナンス&サステナブル投資特使の水野弘道氏、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)事務局のメアリー・シャピロ氏が就任。
アドバイザリーパネルには、デービッド・ロックフェラー基金のニリ・ギルバード氏が議長を務め、カーボントラッカー、PCAF、CISL、世界資源研究所(WRI)、グローバル・オプティミズム、CPI、IIGF、SOAS、CSL、TPI、世界自然保護基金(WWF)からメンバーが招聘された。
GFANZは、最初のアクションとして、5つの活動を支援していくことも表明した。具体的には、機関投資家・企業の気候変動推進イニシアチブ「気候ファイナンス・リーダーシップ・イニシアチブ(Climate Finance Leadership Initiative:CFLI)」の新興国でのイニシアチブの展開、金融機関のインフラのサステナブルラベル策定イニシアチブFAST-Infra、新興国と発展途上国でのエネルギー転換イニシアチブ「Global Energy Alliance for People and Planet」、世界経済フォーラム(WEF)のInnovative Finance for the Amazon, Cerrado and Chaco(IFACC)、英外務・英連邦・開発省の「MOBILIST」プログラム。
[2021.11.10追加]
11月2日、国連気候アクション・ソリューション特使のマイケル・ブルームバーグ氏は、GFANZの共同議長に任命された。
【参照ページ】Amount of finance committed to achieving 1.5°C now at scale needed to deliver the transition
【参照ページ】The Glasgow Financial Alliance for Net Zero
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