日本の環境NGO4団体は1月28日、金融機関に対し、深海底資源採掘に関するセクターポリシーの策定を求める声明を発表した。深海底資源採掘が、環境や文化に与える悪影響をまとめたレポートも発行した。
近年、再生可能エネルギー発電やバッテリーの市場が活況を呈し、銅やニッケル、コバルトの需要が急速に増える中、従来は採算の取れなかった深海底での資源開発が多数計画されるようになっている。
深海底資源は、1970年の国際海洋法条約の中で、人類共同の財産と定義されており、国際ルールに基づく開発のみが認められている。一方で、環境や生態系の観点からも、深海生態系の全貌は解明されておらず、影響を与えるメカニズムもはっきりしていない。さらに深海底には生物多様性の観点からも希少な種が生息していることもわかっており、特に保全が必要な地域にもなっている。また、深海底資源開発は、海表面での作業船により影響への考慮も必要で、マグロやカツオ等の魚種、またはジンベエザメ等の絶滅危惧種の生態系にも悪影響が懸念されている。
環境NGO4団体で構成するフェア・ファイナンス・ガイド・ジャパン(FFGJ)が銀行と保険会社に求めたのは、主に3つの内容。まず、自社で深海由来の鉱物を使用しない方針を採用し、公開すること。続いて、投融資先企業が同様に深海由来の鉱物をサプライチェーンから除外し、モラトリアムへの支持を表明するよう促す方針を定め、公開すること。3つ目が、国連海洋科学の10年における深海採掘のモラトリアムへの支持を表明すること。
このうち、深海採掘のモラトリアムとは、海洋科学者ら600人以上が、2021年から2030年までを「国連海洋科学の10年」と定め、開発モラトリアムを求める運動。すでに企業からも、BMW、グーグル、パタゴニア、フィリップス、サムスンSDI、Scania、トリオドス銀行、フォルクスワーゲン、ボルボは2021年、深海底由来の鉱物をサプライチェーン上で使用しないことと、2030年までのモラトリアムを支持することを公表している。国際自然保護連合(IUCN)も2021年9月、深海鉱物採掘に関する世界的なモラトリアムを求める決議を圧倒的多数で可決させている。
【参考】【国際】BMWとWWF、深海底資源の採掘禁止イニシアチブ発足。グーグル、サムスン等も参画(2021年5月1日)
【参考】【国際】責任ある資源財団、深海底採掘の一時停止を支持。国際的に動き広がる(2021年7月14日)
今回のレポートでは、特にカナダThe Metals Companyが、ナウル政府との合意で進めようとしている開発案件を糾弾。ナウル国民の意思に反する開発になっていると指摘した。島嶼国では、先住民を始め海洋資源に依存しており、が先住民族に対する事前の十分な情報に基づく合意(FPIC)上の問題にも言及した。同様にシンガポールのOcean Mineral Singaporeも非難された。
【参照ページ】海より深い欲望 -深海採掘への投資は海に何をもたらすのか?
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