欧州議会は6月23日、欧州委員会が採択した包括的気候産業規制「Fit for 55」の方針を再審議。EU排出権取引制度(ETS)の強化と社会気候基金(SCF)の設立を求める欧州委員会の政策に対し、賛成479、反対103、棄権48の賛成多数で採択した。今後、EU理事会との交渉に入る。
【参考】【EU】欧州議会、欧州委のFit for 55で規制内容のさらなる強化要請。国境炭素税の前倒しも(2022年6月11日)
今回の審議では、前回6月8日に委員会に差し戻しとなっていた案件が最終的に採択された形。ETS改革では、不動産と商業用陸上交通・輸送がETS対象に追加。一般市民向け交通は2029年まで対象化を免除することを決議した。各業種への無償割当は2027年から段階的に廃止し、2032年までに全廃。また、増減調整を行う「ボーナス・マルス方式」を2025年から導入する。さらに、2030年の二酸化炭素排出量削減目標を61%から63%に引き上げることも盛り込んだ。
ETS歳入に関しては、EU及びEU加盟国の気候変動対策のみを資金使途とすることも決議。活用としては、エネルギー転換に伴うコスト増に対応するため、弱い立場の市民を支援する社会気候基金(SCF)の設立を支持した。SCFは、エネルギー税やエネルギー料金の補助等の短期施策と、建物の改修、再生可能エネルギー、自家用車から公共交通機関への移行、カープールやカーシェアリング、自転車等の交通手段の利用促進等の長期施策の2つが柱となる。財源規模は2027年までで163.9億ユーロだが、2032年までに720億米ドル規模にまで拡大する見通し。資金源増の背景には、商業用陸上交通・輸送と建築物がETS対象になることが大きい。
炭素リーケージ対策では、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)の適用範囲を拡大することを決議。有機化学物質、プラスチック、水素、アンモニア、及びスコープ2排出量も含めることを決議した。CBAM歳入は、発展途上国のグリーン移行の支援に使う。また、CBAMの管理はEUが一元的に実施する。
【参照ページ】Climate change: Parliament pushes for faster EU action and energy independence
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