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【EU】EU理事会、新車販売2035年ゼロエミッション化で妥結。Fit for 55パッケージ

 EU上院の役割を果たすEU加盟国閣僚級のEU理事会は6月29日、欧州委員会が提案した「Fit for 55」政策パッケージに関し、EU理事会としての見解を採択した。自動車分野の排出削減目標や、EU二酸化炭素排出量取引制度(EU-ETS)改革の方向性で合意した。今後、欧州議会及び欧州委員会との政治的合意に向けた調整に入る。

 EU理事会は2日前に、欧州委員会が提案した「Fit for 55」政策パッケージで協議中の再生可能エネルギー指令と、エネルギー効率指令に関する方向性で合意。今回は、積み残していた議題について合意に達した。 

【参考】【EU】EU理事会、再エネ割合40%への引上げで合意。データセンターも省エネ対象(2022年6月28日)

 小型自動車(乗用車・バン)での二酸化炭素排出量では、2030年までの削減目標を自動車は55%に、バンは50%に引き上げることで合意。また、乗用車とバンの新車販売では、2035年までにゼロエミッション車両に限定することでも合意した。

 2035年期限に関しては、6月8日に欧州議会が先行して合意。EU理事会での協議過程では、イタリア、ポルトガル、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアの5カ国が、期限を2040年まで延長することを求め、協議がもつれ込んだ。そこで、プラグインハイブリッド技術を含む技術開発、及びゼロエミッションに向けた実行可能かつ公正な移行(ジャスト・トランジション)の重要性を考慮し、欧州委員会が2026年に進捗状況を評価するとともに、目標を見直す必要性を検討する内容を追加。最終的に反対していた5カ国も賛成に回った。

【参考】【EU】欧州議会、欧州委のFit for 55で規制内容のさらなる強化要請。国境炭素税の前倒しも(2022年6月11日)

 また、乗用車・バンに関しては、ゼロ・低排出ガス車(ZLEV)に対する補助金等のインセンティブ制度を2030年時点で終了させることにも合意。さらに、代替燃料インフラ(AFIR)の配備に関連したEU法改正により、EU全域で運転者が自動車を充電できるよう状態を担保することも合意した。

 EU-ETSでは、欧州委員会から提案された2030年までにEU-ETS対象セクターで、2030年までに61%の排出削減を目指す目標案に合意。排出割当量は、最初に1億1,700万t削減した上で、毎年削減幅を4.2%分ずつ増やしていく方針で合意した。市場安定リザーブ(MSR)に関しても、年間排出枠取得率を一時的に24%に引き上げている措置を2023年以降も延長し、4億枠を超えるとリザーブ分を無効とするという欧州委員会の提案を支持した。また、MSRでは、EU-ETS市場価格が高騰した場合に、MSRのリザーブ分を自動的にかつ即応的に供給するメカニズムを用意することでも合意した。

 セクター別では、まず、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の対象セクターでは、無償割当を2026年から2035年の10年間で段階的に廃止する欧州委員会案を支持。一方で、段階削減のペースを遅め、初期には緩やかに、終盤で一気に削減していく傾斜措置とすることで合意した。欧州委員会に対しては、炭素リーケージを含むCBAMの影響措置をモニタリングし、追加措置の必要性を評価していくことを求めた。

 化石燃料セクターでは、EU-ETSを義務対象より任意に拡大する「オプトイン制度の導入」で合意。小規模燃料供給者には、簡素化されたモニタリング・報告・検証(MRV)ルールを導入する。地域暖房セクターでは、特定の加盟国では、一定の条件下で追加の無償割当を認めることでも合意した。

 また、国際海運セクターと航空セクターでは、欧州委員会案を支持。これにより、国際海運はEU-ETSの対象となるが、海運に大きく依存する加盟国への影響を軽減するため、排出枠の上限額の3.5%を当該加盟国に再配分することで合意した。小島、冬季航行、公共サービス義務に関連する航行に対しては、経過措置を設ける。航空セクターでは、無償割当量を2027年までに段階的に廃止。また「国際航空のための炭素オフセット・削減スキーム(CORSIA)」との関係では、EU-ETSは英国及びスイスを含む欧州域内のフライトに適用、CORSIAはCORSIAに参加する欧州域外とのフライトに適用することで合意した。また、持続可能な航空燃料(SAF)の使用に伴う追加コストを補償するために、段階的に廃止される無償割当のうち2,000万ドルを確保することに合意した。地理的立地を考慮し、限定的な経過措置の適用除外も提案した。

 陸上交通・輸送セクターと不動産セクターでは、別の排出量取引制度を新設することでも合意。対象は同セクターの燃料販売事業者となる。但し、導入時期は、欧州委員会が提案した2027年から2028年へと1年遅らせる方針で合意した。排出削減係数に関しては、欧州委員会が提案した2024年から毎年5.15、2028年から毎年5.43とする案を支持した。制度を円滑にスタートさせるため、初年度はオークション供給量を30%分追加する「フロント・ローディング」制度を導入する案も支持した。新設の排出量制度が開始すると、EUでの排出量取引制度対象の排出量は、全体の約60%を占めることになる。

 EU-ETS全体では、2024年から二酸化炭素以外の温室効果ガス(GHG)をMRV規制に含め、その後EU-ETSの対象とすることでも合意した。また、各EU加盟国が国単位で炭素税を課し、その水準がEU-ETSにおける不動産及び陸上交通・運輸セクターの排出量のオークション価格以上の場合には、新設の排出量取引制度の適用を免除することを今後の交渉材料とすることでも一致した。

 国内海運、農業、廃棄物、小規模産業部門といったETS対象外のセクターでは、削減目標を2030年に2005年比40%減とすることで合意。各加盟国に削減分を割り当てる「努力分担制度」が適用される。加盟国の割当分移転は、2021年から2025年は10%、2026年から2030年は20%に増やす。

 土地利用・土地利用変化・林業(LULUCF)セクターでは、排出量が除去量を上回らないという現行ルール「no debit rule」を2025年までは維持し、2026年からは2030年はLULUCF全体でのカーボンニュートラルを達成することを最低基準とした国家目標の策定を義務化。森林火災等の「自然擾乱」によるものは、算出から除外できる制度は維持する。2021年から2025年までのネット吸収分を2026年から2030年までの分に持ち越すことはできない。排出EU全体では、LULUCFセクターでのネット吸収量を、現行から15%多い310Mtとする目標で合意した。農業からの二酸化炭素以外の温室効果ガス排出も、規制の対象となる。

【参照ページ】Fit for 55 package: Council reaches general approaches relating to emissions reductions and their social impacts

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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