国連気候変動枠組条約第27回シャルム・エル・シェイク締約国会議(COP27)議長国エジプト政府は11月8日、世界40億人がレジリエンスのある環境に暮らせる状況を2030年までに実現するための30の気候変動適応策「シャルム・エル・シェイク適応アジェンダ」を提唱した。世界全体で国、地域、自治体、企業、投資家、NGOの行動を促す。
エジプト政府は今回、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書(AR6)第2ワーキンググループ報告書と、国連ハイレベル気候チャンピオンの分析紹介。1.5℃上昇でも2030年までに世界人口の約半数となる約40億人が気候変動影響による深刻なリスクにさらされると指摘。そのため今回目標として40億人を設定した。
同アジェンダでは、「食料安全保障・農業システム」「水・自然システム」「人間居住システム」「海洋・沿岸システム」「インフラシステム」を5つの柱として設定し、さらに横串のテーマとして「計画」「ファイナンス」の計7つで構成している。
食料安全保障・農業システム
- 気候レジリエントで持続可能な農業で、農地拡大を伴わず、収量17%増、農場での二酸化炭素排出量を21%削減
- 食品ロスと一人当たりの食品廃棄物を2019年比50%減
- 健康的な代替プロテインの世界市場シェアを肉・魚介類市場全体の15%
- 果物、野菜、種子、ナッツ類、豆類の世界消費量を1.5倍
水・自然のシステム
- 水安全保障と現地市民の生計のため、自然を軸としたソリューション(NbS)で、陸上と内水で、4,500万haを保護区化、持続可能な管理を20億ha、再生を3億5,000万ha。法定の先住民と地域社会を保護
- 金融機関は、2025 年までに投融資先でのコモディティ主導型森林破壊を撲滅。2030年までに自然を軸としたソリューション(NbS)への投資機会を年間3,540億米ドル(約52兆円)水準に
- 水システムをスマート、効率的、堅固なものに転換。漏水削減
- 廃水システムはリサイクルと再利用を最大化。環境流出ゼロの状態で自然湿地濾過活用
- 持続可能な灌漑システムを、世界の農地20%に導入。水の利用可能性を維持しながら収量増
人間居住システム
- ディーセントで安全な住宅を実現するため、10億人に住宅設計、建設、金融アクセスを改善
- スマートシステムおよび早期警報システムは30億人をカバー
- 都市部コミュニティでは、自然を軸としたソリューション(NbS)に1兆米ドル投資
- 基本的かつ不可欠なコミュニティサービスへのアクセス確保のため社会インフラ強化
- 廃棄物を二次資源として利用し、インフォーマル労働者の生活向上、野外でのゴミ焼却60%削減し、汚染レベル低減、健康向上を実現
海洋・沿岸システム
- 40億米ドルを投資し、世界中のマングローブ林1,500万haを保護。そのためのマングローブ消失の阻止、近年減少分の50%の再生、マングローブ保護2倍、現存する全てのマングローブサステナブルな長期ファイナンスの確保
- サンゴ礁の喪失阻止、保護、再生。熱帯地域の人々を支援
- 海草、沼地、海藻の喪失阻止、保護、再生。温帯地域の人々を支援
- 都市の海岸線をグレー(人工)もしくは自然と人工のハイブリッド型ソリューションで保護
インフラシステム
- 多様なエネルギー源により、気候レジエントなエネルギーシステムを通じ、電力に接続されていない6億7,900万人への安価な電力アクセス確保と、アクセスが不十分な10億人のアクセスの質向上
- クリーンクッキングのための革新的な資金調達を世界全体で年間100億米ドル以上。40億人にアクセス提供
- 蓄電容量585GWと送配電網の拡張。分散型電源と消費を可能に
- アフォーダブルな公共・民間交通サービスの拡大で、低コストのクリーン車両とモビリティ・ソリューションを世界20億人に
- 輸送インフラを気候レジリエントにするための新た棚技術、設計、材料の採用
計画
- 世界全体で市単位で10,000機関と広域自治体単位で100機関が科学的根拠に基づく気候変動適応計画を策定
- 世界全体で大企業2,000社が実行可能な気候変動適応計画を策定
- 地域レベルからグローバルレベルまで、気候変動リスクを意思決定に組み込むために必要なツールや情報への普遍的なアクセス
- 国別適応計画(NAP)と地域主導の原則の運用を、国主導かつ地域密着協議型で実現
金融
- 民間セクターは、気候変動の物理的リスクを投資判断に組み入れ、適応とレジリエンスのための資金調達メカニズムでイノベーションを継続し、官民双方で必要な1,400億米ドルから3,000億米ドルの資金を動員
- 公的金融では気候変動資金の提供を増やし、気候変動資金全体の50%を適応とレジリエンスに割当て
- 損害保険業界は、気候変動適応に向けた業界の長期的なアプローチを制度化
同アジェンダは、国だけでなく、企業や自治体等の非国家主体にも実現を提唱。今後、国連ハイレベル気候チャンピオンとマラケシュ・パートナーシップが事務局を務め、継続的に活動を運営していく。
【参照ページ】COP27 Presidency launches Adaptation Agenda to build climate resilience for 4 billion by 2030
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