CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)らによる、企業らに対して科学的根拠に基づき必要となるCO2排出量削減を求める国際イニシアチブのScience Based Targets Initiative(SBT)は5月20日、世界の気温上昇を2℃以内に抑制する上で科学的に必要とされているCO2排出削減量に沿った削減目標を掲げる企業100社を招集するキャンペーンを開始した。
今年の12月にパリで開催予定のCOP21を前に、各国の政策立案者らに対して産業界は低炭素経済の実現に向けて役割を果たすことにコミットしているということを明確に示すのが目的だ。
国連グローバル・コンパクトによると、現在世界の大手グローバル企業500社のうち80%がCO2排出削減目標を掲げているものの、国際的な合意に至っている2℃以下の気温上昇抑制という目標の実現に合わせた目標設定をしている企業は一部の先進企業に限られるという。
CDPの報告書"Mind the Science"によると、世界全体のCO2排出量の9%を占めているエネルギー集約型企業70社のうち、気候変動の科学的根拠に沿った目標を設定している企業は28社しかなかったとのことだ。同レポートは「科学的根拠に基づく目標設定は経済成長と両立可能だ。実際に、そのような目標はイノベーションを促進し、コスト削減、収益性強化にもつながると同時に、気候変動が株主価値や社会全体にもたらす深刻な脅威に立ち向かうための出発点でもある」としている。
更に、国連グローバル・コンパクトは科学的根拠に基づく目標設定は新たな市場への参入、気候変動関連の規制および政策への対応、製品移行のきっかけや企業レピュレーションの向上など、様々な潜在的メリットを企業にもたらすとしている。
2020年までに排出量を2005年比で60%削減すると表明したフランス化粧品大手、ロレアルのCSO(最高サステナビリティ責任者)を務めるAlexandra Palt氏は「野心的なCO2排出量削減目標は、我々のチームを低炭素に向けたイノベーションへと後押ししてくれる。もちろん、我々の目標の背景には気候変動に関する最新の研究があることを知ることは、あらゆる規模の企業のコミットメントを増加させる」と語った。
ロレアルの他に科学的根拠に基づくCO2削減目標を掲げている企業としては、米国最大の独立系電力会社のNRGエナジーは2050年までに90%削減という目標を掲げているほか、フランスのフードサービス大手ソデクソは2020年までに2012年比で34%削減という目標を掲げている。他にも、H&Mやネスレ、BTグループなども同様に2℃以内の温度上昇抑制を前提とした目標設定をしている。
Science Based Targets Initiativeは、科学的根拠に基づく目標を設定する際に多様なメソッドを活用するように企業に対して推奨している。例えば先ごろ公表されたSDA(Sectoral Decarbonization Approach)は、エネルギー集約型産業の企業に対し、予測される経済活動レベルおよび潜在的な排出削減量に基づき目標設定を支援するものだ。
多くの企業の短期的な排出削減目標は2015年に期限を迎える中、次の10年、数十年に向け、各社には気温上昇を2℃以下に抑制するという国際的目標に沿った新たなコミットメントが求められている。
【参照リリース】Campaign launches to close the gap between corporate GHG reduction goals and a 2°C scenario
【団体サイト】Global Compact
【参考サイト】CDP
【参考サイト】Science Based Targets
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