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【イギリス】日産、EVバッテリーを送電網と連系。所有者は売電が可能に 2016/06/01 最新ニュース

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 日産自動車とイタリア電力大手エネル(Enel)は5月10日、電気自動車のバッテリーに充電した電力を、電力需要のピーク時に電力会社に売電できる新たなスキームを英国で構築したと発表した。日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」とEVバン車「e-NV200」の所有者は、このプログラムに参加すると、電気自動車から電力網に送電する装置(V2G:Vehicle to Grid)を設置してもらえる。電力網に送電された電力は電力会社が買い取り、所有者は収益を得られる。日産とエネルはまず100台を試験導入する。V2Gは、スマートグリッド構想にとって重要な技術であり、夢と思われていた世界がまたひとつ現実となってきた。

 日産とエネルの提携の発端は6年前に遡る。2010年4月、日産、ルノーと、エネル、スペイン電力大手のエンデサの4社は、電気自動車のバッテリーをスマートグリッド構想にとってのエネルギー貯蔵システムとして活用し、充電インフラを共同開発していくパートナーシップを締結していた。そして昨年12月の気候変動枠組み条約パリ会議(COP21)の会場で、日産とエネルはV2Gに関するパートナーシップを締結。早速翌1月にはデンマークで40台のV2G装置を導入していた。この導入実験の成功から、ユーザーが価格の安い時間帯に電力を購入し、高い時間帯に販売することが可能だと確認されていた。さらに今年3月、フランスのモンティニー=ル=ブルトンヌーにある日産の事業所にV2Gを導入、64台のリーフのバッテリーからの電力供給と同事業所内の太陽光発電を組み合わ、事業所に電力供給することに成功した。日産は2017年中に全ての地域本社でこのシステムを導入する予定だ。

 V2Gと連動した新バッテリーを搭載するリーフの予約は、今年9月から受付を開始される。日産は、V2Gが英国内にある18,000台のEV車全てと電力連系した場合、創出電力は180MWとなると見積もっている。また、V2Gというコンセプトによる電力コスト削減分は、2030年までに24億ポンド(約3,800億円)に上ると話している。日産は2015年5月に、グリーン電力システムを手掛けるGreen Charge Networksと提携し、電気自動車の中古バッテリーを電力蓄電池として活用する検討もスタートさせている。リチウムバッテリーは95%がリサイクル可能だ。

 エネルギーの観点からは、V2Gは1次エネルギーの蓄電であって、自前の新たな発電ではない。しかしその意義は決して小さくない。電力需要は1日の中で夜間に少なく日中に多いという特性がある。そのため、日中の電力需要ピーク時に合わせて発電所は建設されており、基本的に夜間に発電所がフル稼働することはない。そのため、夜間に蓄電し日中に電力供給することで、発電所の建設を抑えることができる。V2Gは、低電力時に電気自動車に蓄電し、電力需要ピーク時に電力を送電網に流す仕組みのため、まさに電力需要の平準化に寄与することができる。既存の揚水発電に似ているということもできよう。

 V2Gが魅力的なもうひとつの点は、再生可能エネルギーと相性が良いことだ。太陽光や風力発電は状況によって発電量が大きく変ってしまう。太陽光発電は雨天には発電量が大きく減退し、風力発電は風がなければ発電できない。そのため安定電力には成り得ないと言われてきた。しかし、EVが蓄電できるようになれば話は変わる。風がたくさん吹くタイミングで発電した電力をEVに蓄積し、風が止んだタイミングで送電すれば安定電力になり得る。蓄電池の導入には従来コストがかかりすぎると言われてきたが、EVのバッテリーが活用できるのであれば追加の蓄電池コストがかからなくなる。また、一般的に蓄電技術が発達すれば、再生可能エネルギーの可能性はさらに広がると言われている。

 V2Gの普及は自動車分野にとってもいい話だ。今回英国で実現するように、EV所有者が売電で収益を得られるようになれば、EV購入にとって追い風となる。EVが増えればそれだけガソリン車やディーゼル車が減ることとなり、温室効果ガス排出量も削減できる。

 スマートグリッドの進展は、産業構造を激変させる可能性が高い。これまで電力会社が独占してきた領域に、バッテリーメーカーや自動車メーカーが参入してきている。また、エネルギー代替への対策として、石油・ガスなどのエネルギー企業も電力事業やバッテリー製造に参入してきている。グーグルなどIT企業も大きな関心を示している。さらに、これらの業界再編や事業提携、M&Aは国境を超え、グローバルな規模で展開されている。再生可能エネルギーやスマートグリッドは欧州が先んじて発展を見せてきた。日本企業各社もいち早く欧州で成功を収め技術を磨いていけなければ、来るスマートグリッド時代の主導権は取れなくなってしまうかもしれない。

【参照ページ】Nissan And Enel Launch Groundbreaking Vehicle-to-Grid Project in The UK
【参照ページ】Nissan revs up for ‘decade of disruption’ with UK’s first vehicle-to-grid energy storage system
【参照ページ】Nissan powers French office with world’s largest EV battery storage system
【参照ページ】ルノー・日産アライアンス、伊エネル社、西エンデサ社 電気自動車普及のためのパートナーシップを締結

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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