国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)と日本ウイグル協会は4月8日、中国・新疆ウイグル自治区での大量の拘束、虐待、強制労働、ムスリム文化の破壊といった人権侵害に関し、日本企業14社を対象に実施した質問票調査の回答をまとめた報告書を発表した。日本企業のサプライチェーンマネジメントの状況から、日本企業と中国の強制労働との関係性は強く疑われると指摘した。
同報告書は、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が2020年3月に発表した報告書で強制労働との関連性を指摘された日本企業に対し、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づく対応を求めている。2020年8月には、HRNと日本ウイグル協会は、第1回の調査レポートを発表。今回が、フォローアップ調査となった。2月には回答速報を伝えており、今回、分析報告書にまとめた。
【参考】【国際】中国ウイグルでの強制労働、各業界が対策声明発表。日本大手11社も関与可能性(2020年3月13日)
【参考】【日本】ヒューマンライツ・ナウ、日本企業11社のウイグル人権問題対応を批判。投資家にも行動促す(2020年8月29日)
【参考】【日本】人権NGO、ウイグルでの人権リスク質問にパナソニックは回答せず。他の11社は回答(2021年2月22日)
対象となっている14社は、日立製作所、ジャパンディスプレイ、三菱電機、ミツミ電機、任天堂、ソニー、TDK、東芝、ファーストリテイリング、しまむら、シャープ、良品計画、パナソニック。京セラの14社。そのうちパナソニックだけが回答しなかった。
同報告書は、日本企業は、UNGPに基づき、サプライチェーン及びバリューチェーンを対象とする人権デューデリジェンス(人権 DD)を実施し、事業活動が人権侵害の原因になる場合のみならず、人権侵害に加担・助長している可能性がある場合、あるいは取引関係によって企業の事業・製品・サービスと直接結びついている場合についても取り組むことが求められると指摘。人権侵害が特定された場合は、原則としてこれに対する救済も含め、取引先等に対し人権侵害の予防、軽減を働きかけることが必要であり、即座の取引停止は本来、指導原則の趣旨にも反するものの、今回問題となっている人権侵害は国家が主導するものであり、企業として関与すること自体が既に人権侵害への加担・助長であり、これを予防、軽減、救済することは極めて困難であると整理した。
その上で、少なくとも現在公開されている情報に基づくと、新疆ウイグル自治区に関連する強制労働と日本企業・組織との関係性は強く疑われ、この点について企業は重大な説明責任を負っていると厳しい見方を示した。
海外企業では現在までに、パタゴニア、H&M、イケア等はサプライチェーンにおける新疆ウイグル自治区からの素材調達やコットンの購入を停止持続可能な綿花栽培を促進する国際 NGO「ベター・コットン・イニシアティブ」(BCI)も、2020年10月に人権懸念を理由として、同地の綿花事業者への認証を停止している。
【参照ページ】【報告書】ウイグル自治区における強制労働と日系企業の関係性及びその責任
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