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【中国】政府、イノベーションで環境課題を解決する政策公表。技術取引市場も大規模拡大へ

 中国国務院科学技術部、生態環境部、住宅都市農村建設部、気象局、林業草原局の5部局は11月2日、環境分野の科学技術イノベーション特別計画を発動したと公表した。第14次5ヵ年計画とビジョン2035に基づく骨太政策。計画自体は9月19日に採択されていた。

 同声明は今回、中国共産党中央委員会は、環境文明の建設に史上最大級に注力し、前進は見られるが、構造的、根源的、傾向的にはまだ解決されていないとの認識を披露。要求レベルとのギャップは大きいとした。特に、イノベーション課題は大きく、環境モニタリング、気候変動を含めた複数の環境課題を統合的に解決する技術、山、水、森、湖、砂の分野の環境再生技術、環境技術の産業競争力等が不足しているとの見方を示した。

 また国際動向としては、社会・経済・環境のバランスのとれた協調的で持続可能な発展を求め、グローバル課題や地域連携マネジメントのためのグリーンテクノロジー研究開発は、社会の関心事となりつつあり、生態系や自然資本を包括的にマネジメントする方向へとシフトしてきているとの伝えた。その中で、多くの分野で破壊的な技術的ブレークスルーが起こり、技術や機器のインテリジェント化が進展する等、分野と技術の融合がより明確になってきており、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、5G、バイオテクノロジー、新素材、IT、AI等の新興技術ツールが環境技術の進歩を著しく促すようになっているとした。

 今回の特別計画では、今後の政策の柱として、自然環境を一体として捉え、包括的に解決するためのイノベーションと政府のガバナンス能力を構築していくアプローチを掲げた。そのためにも市場の力を活用する。学際的、国際的な協力関係も重視するとした。また具体的な主要分野としては、10個を挙げた。

  1. 環境モニタリング:大気中のPM2.5とオゾンの3次元総合モニタリング。水質汚染モニタリング。ビッグデータを統合して構築するリモートセンシングと地上モニタリング監視システム。汚染点源の検知・特定システム。二酸化炭素排出点源の検知・特定システム。水質学・水文学・生物学のマルチソースデータと早期警報モデルを統合し、IoT、ビッグデータ、人工知能等の技術に活用したリスク分類及び早期警報、緊急時モニタリング・対応を実現する知的技術プラットフォーム。
  2. 水質汚染防止・制御、水系生態系再生:都市排水インフラ。農業排水汚染管理。産業排水汚染管理。浄水・給水インフラとレジリエンス。地下水生態系再生。「水文学-流体力学-水質-水生生物」の相乗効果のためのシステム結合シミュレーションと予測技術のブレークスルー。
  3. 大気汚染防止・制御:汚染源の特定と汚染予測モデル。PM2.5とオゾンの複雑相互作用を考慮した制御技術。汚染と健康影響メカズムの解明と制御技術。モビリティ等の移動物からの大気汚染物質排出の高度管理技術。大気汚染物質と温室効果ガスの包括的マルチスケール型管理技術。
  4. 土壌汚染:PFASやマイクロプラスチックも含めた汚染メカニズムの解明。農地汚染浄化と安全利用の技術。土壌汚染の高度な特定・モニタリング技術。
  5. 固形廃棄物削減:固体廃棄物のリスクに対するインテリジェント監視技術とデジタル制御技術。製品エコデザインとグリーンプロセス制御の技術。産業廃棄物・産業リサイクル連携技術。高度な製品分解と高付加価値リサイクルの技術。家庭廃棄物、食品廃棄物、家畜排泄物、農業廃棄物、医療廃棄物の効率的な分類と利用技術。マルチソース固体廃棄物の削減・制御・高付加価値利用を実現する統合モデル。
  6. 汚染分野の跨る物質の統合管理:土壌・地下水汚染の統合管理・再生。マルチメディア複合公害対策技術。公害削減・二酸化炭素排出削減技術のコラボレーション。
  7. 生態系保護・再生:人と自然が織り成す生態系の進化メカニズム。生物多様性の保全と外来種の防止・制御技術。砂漠化・岩石砂漠化・森林劣化・土壌侵食の統合管理モデル。都市での健康・環境の統合管理と生態系サービス向上。生態系回復把握の総合的なパフォーマンス評価技術システム。
  8. 新規汚染物質管理:化学物質のハイスループット毒性試験と暴露評価技術の高度化。化学物質とグリーン代替合成技術の優先順位付けと分類。環境リスクの分類、ゾーニング、制御技術。新規汚染物質の環境リスクの予防・制御技術。医学的知見を用いた騒音対策と音マネジメント。
  9. 気候変動:気候変動ビッグデータ・地球システムモデルのデータ基盤・予測技術。気候変動影響評価とリスク早期警戒のための技術。重工業・運輸・建設でのカーボンニュートラル化実現技術。炭素回収・利用・貯留(CCUS)技術。気候スマート農業を含めた気候変動適応のための主要技術。ビッグデータとIoTを活用した二酸化炭素排出量産出方法と技術システムの確立。
  10. 国際条約関連:POPs条約の遵守を支援する技術。バーゼル条約管理廃棄物の総合的な防止・管理および有効性評価技術。オゾン層保護条約遵守の有効性評価と早期警戒のための技術。生物多様性・砂漠化対応技術支援。水銀汚染監視と生態環境リスク防止・制御技術。

 また、科学技術部、教育部 工業情報化部、交通運輸部、農業農村部、国家衛生健康委員会は7月29日、「人工知能の高度化を推進するシーンイノベーションの加速に関するガイダンス」も公表。各産業分野でのAI活用シーンを理想形で設計し、逆算する形で人材形成や産業形成を促す政策も打ち出している。

 さらに科学技術部は9月30日、第14次5カ年計画の技術分野市場計画も発表。国内及び国際的な技術取引市場の形成を加速させる方向性を掲げた。中国では、科学技術部と財政部が、国家科学技術成果転換指導基金を創設し、2020年末までに、30のサブファンドを設立。サブファンドの規模は422億3700万人民元(約8,600億円)にまで大きくなり、すでに402社に投資。加えて、地方行政単位でも、20省・市に総規模約1400億人民元(約2.8兆円)の科学技術成果転換指導基金が立ち上がってきている。科学技術部、中国工商銀行(ICBC)、中国建設銀行、中国銀行、深圳証券取引所は合同で科学技術金融プログラムを進めており、民間資金も多く活用されてきている。

 科学技術部は、すでに技術取引市場は中国国内で基本形が完成しているとみており、今後、世界トップレベルにまで設計を深化させると表明。また、数多く誕生している技術取引市場を相互接続するネットワークを構築し、中国技術取引所、上海技術取引所、深圳証券取引所の3つを中核としていく考えも披露した。また2025年目標も発表。市場規模は2020年の2.6兆人民元から5兆人民元(約100兆円)へ、 科学技術成果の移転と転換のための国家科学技術正回転・転換実証区20カ所(現9ヶ所)、国家技術移転地域センター15カ所(現11ヶ所)、国家技術移転機関500カ所(現420ヶ所)、国際技術移転センター60カ所(現45ヶ所)、技術管理者3万人(現1万人)を掲げた。

【参照ページ】科技部 生态环境部 住房和城乡建设部 气象局 林草局关于印发《“十四五”生态环境领域科技创新专项规划》的通知
【参照ページ】科技部等六部门关于印发《关于加快场景创新以人工智能高水平应用促进经济高质量发展的指导意见》的通知
【参照ページ】科技部关于印发《“十四五”技术要素市场专项规划》的通知

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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