国際労働機関(ILO)、国連環境計画(UNEP)、国際自然保護連合(IUCN)は12月8日、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の場で、社会課題の解決で自然を軸としたソリューション(NbS)を活用することで、新たに2,000万人の雇用創出効果があるとの報告書を発表した。
NbSの定義については、国連環境総会決議(UNEP/EA.5/Res.5)で用いられた、「社会、経済、環境の課題に効果的かつ適応的に対処し、同時に人間の福利、生態系サービス、回復力、生物多様性の利益をもたらす、自然または改変された陸上、淡水、沿岸、海洋生態系の保護、保全、回復、持続的利用、管理のための行動」と紹介。現在、世界で7,500万人がNbSに従事しているという。
今回の報告書によると、世界のNbS支出の大部分は高所得国で発生しているものの、雇用では96%がはアジア・太平洋地域と低中所得国に生まれているという。仕事の多くはパートタイムだが、フルタイム換算で約1,450万人と推定した。低所得国と低中所得国では、ほぼすべてのNbS雇用が農林業に集中。この比率は、高中所得国では42%、高所得国では25%に低下する。農業生産性の高い先進国では、NbSの支出は生態系の回復と天然資源管理に集中。高所得国では、公共サービスがNbSに占める割合が37%と最も高く、建設も14%とかなりの割合を占めている。
しかし、同報告書は、NbSの雇用を測定することには、既存の雇用の喪失分も勘案する必要があるとし、「公正な移行」を促した。公正な移行のプログラムとしては、職業紹介サービス、公的な雇用プログラム、再就職トレーニング、失業給付、早期退職、生態系サービスへの支払い(PES)プログラムの利用を挙げた。
また現状では、NbSの雇用は、ディーセント・ワークの状態を実現していないことも多く、雇用慣行の改善も訴えた。同報告書は、NbSで働く企業や協同組合の育成・支援策、適切な技能開発、労働者がNbSでの仕事に就くための準備・支援策、大学でのNbSの主要カリキュラム化、最低賃金、労働安全衛生、結社の自由、社会対話の活用等、NbSが中核的労働基準を順守するため「正しい移行政策」を呼びかけた。
ILOとUNEPは、国連気候変動枠組条約第27回シャルム・エル・シェイク締約国会議(COP27)の中で、報告書「Green Jobs for Youth Pact」を発行し、100万のグリーン・ジョブを創出することを目標として掲げた。
【参照ページ】Nature-based Solutions can generate 20 million new jobs, but ‘just transition’ policies are needed
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