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【国際】UNEPとS&Pグローバル、TNFDに基づく指標算出で新たな手法発表。EIIの概念を主軸

 国連環境計画(UNEP)と金融情報世界大手米S&Pグローバルは1月17日、金融機関向けに、企業が自然に与える影響と依存性に関する新たな評価手法「ネイチャー・リスク・プロファイル」を発表した。自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のLEAPアプローチとEvaluateアプローチに基づく指標算出に関するディスカッションペーパーの役割を果たしている。

【参考】【国際】TNFD、フレームワークのベータ版第2版発行。指標・目標で検討進む(2022年7月1日)

 今回開発した手法は、企業や金融機関、投資家が自然関連のエクスポージャーを特定し、定量化することを可能にする指標とデータの概要を示したもの。同手法は企業が生物多様性に依存することから生じるリスク(エクスポージャーリスク)と企業が生物多様性に与える影響から生じるリスク(インパクトリスク)の双方を扱っている。

エクスポージャーリスク算出

 エクスポージャーリスクの算出では、21種類の生態系サービスに対する依存度を算出していく。21種類の生態系サービスは、地下水、地表水、遺伝子資源、動物由来エネルギー資源、その他の資源の「供給サービス」、花粉媒介、生物学的防除、換気、水量調節、水質浄化、水質、土壌の質、土壌侵食の抑制、気体希釈、気候調整、洪水・防風対策、バイオレメディエーション、疾病対策、生物生育環境、センサリーインパクトの軽減の「調整サービス」で構成される。

 算出では、マテリアリティ度合い、関連性度合い、依存度度合いの3つがインプット指標となり、各分類の総合スコアを計算。最後に事業売上を掛け合わせ、企業単位やアセット単位の値を算出する。具体的な計算式も示されている。マテリアリティ度合いの算出では、自然資本分野の国際金融業界団体「Natural Capital Finance Alliance(NCFA)」が開発した「ENCORE」を活用する。関連性度合いや依存度度合いの算出については、今回は考え方のみを提示した。

【参考】【国際】自然資本金融推進NCFA、環境変化の経済影響分析ツール「ENCORE」の生物多様性モジュール発表(2021年6月7日)

インパクトリスク算出

 インパクトリスクの算出では、事業軸で潜在的なリスクの大きさ(マグニチュード)、立地軸で実際に周辺の生態系に与える潜在リスクの重大さ(シグニフィカンス)、緩和策の3つで構成される。

 マグニチュードの算出では、周囲の生態系が事業を通じてどれだけ変わらず維持されるか(生態系インテグリティ・インデックス:EII)を算出する。EIIの算出アプローチとしては、残存状況を評価する「特性アプローチ」と、変化影響側を評価する「寄与アプローチ」の2つが提示された。

 EIIは、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)のヒル研究員らが提唱している概念で、2022年に論文が発表されている。提唱されている計算方法では、まず。生態系インパクトを、構造(土地利用)ベースでの変化、生態系の内部の構成ベースの変化、生態系の機能ベースの変化の3層にわけて算出する。構造ベースの変化では、人口密度、既成市街地、農業、道路、鉄道、鉱業、油井、風力タービン、電気インフラ等の11の指標を組み合わせて総合指標を計算。構成ベースの変化の算出では「生物多様性完全度指数(BII)」を提示した。機能ベースの変化の算出では、観測された純一次生産力(NPP)とエコリージョンの「自然」基準NPPレベルとの比率を提示した。その後に、これら3つを最小値法を用いて集約し、最終的な指標を算出する。

 特性アプローチでは、EIIの構造ベース指標と構成ベース指標を採用する。構造ベース指標は、広範な土地利用区分でのEIIの平均値を国単位の平均値で作成する手法を提唱した。構成ベース指標は生態系データベース「PREDICTS」のサイト単位のデータをモデル化して活用する考え方を提示した。

 生態系構成レイヤーの場合、資産による生態系構成への 影響をシミュレートするには、影響が及ぶ地域内で新し いモデル係数を投影する必要がある。構成層は、生物多 様性保全指数、土地利用、人口密度などの連続的な圧力 変数の間の関係をモデル化し、土地利用図に投影したものである。これはPREDICTSデータベース内のサイトレベ ルデータからモデル化されたもので、鉱山や石油・ガス インフラといったサイトベースのセクターにおける生物 多様性の研究はほとんど行われていない。

 一方のシグニフィカンスの算出は、そもそもの生態系毎の自然環境全体における重要性の違いを考慮するために設けられている。今回、絶滅危惧種に対する重要性(STAR評価指標)や、スタンフォード大学のチャップリン上級フェローらが提唱している生態系サービス重要性の概念を紹介した。
 
 今回の重要概念となっているEIIは、現在UNEP-WCMCで開発作業が進められている。但し、今回算出された手法に基づいて、企業や金融機関が各々で算出していくことは容易ではない。S&Pグローバルは、各社では負担が多いが必要となるデータ事業分野を、新たな事業機会として見出してきている。

【参照ページ】UNEP and S&P Global Sustainable1 launch new nature risk profile methodology

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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