みずほフィナンシャルグループは4月3日、2030年度までの累積サステナブルファイナンス目標を現行の25兆円から4倍の100兆円と大幅に引上げた。金額目標は三菱UFJフィナンシャル・グループの35兆円を上回り国内トップとなった。同社は今回、同時にセクター方針も大幅に厳格化した。
【参考】【日本】みずほFG、メガバンク初の石炭火力新設投融資禁止表明。MUFG、SMFGとの比較含め解説(2020年4月15日)
【参考】【日本】MUFG、2030年サステナブルファイナンス目標を20兆円から35兆円に引き上げ(2021年4月2日)
今回発表した2030年度100兆円のサステナブルファイナンス目標のうち、環境・気候変動対応ファイナンスのみで50兆円(現行12兆円)を達成する目標も設定。さらに、サステナビリティ関連のリスクマネジメントを一元的に担う組織として、グループCROの傘下に「サステナビリティリスク管理室」を新設。また、取締役会で「気候関連リスク管理の基本方針」も制定し、管理体制も強化した。
セクター方針では、一般炭採掘に関し、すでに制定していた「石炭採掘(一般炭)に紐付くインフラの新規開発及び拡張を資金使途とする投融資等の禁止」の加え、「石炭採掘(一般炭)に紐付くインフラ事業を主たる事業とする企業で、現在〈みずほ〉と投融資等の取引がない企業に対する投融資等の禁止」も追加。法人単位での禁止にも一歩踏み込んだ。石炭火力発電については、電力全体のスコープ1原単位目標の設定と、与信残高エクスポージャーの開示のみを行っており、石炭火力発電への投融資を完全に禁止することはしていない。
一方、石油・ガスについては、中⾧期的な石油・ガス需要の転換が必要と認識しつつ、足元ではLNGをはじめとするエネルギー供給の逼迫やエネルギー価格高騰がグローバル課題となっていることや、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)等の場で石油・ガスの段階的な削減は国際合意に至っていないことを踏まえ、全面的な投融資禁止・削減は見送った。但し、「石油・ガス採掘事業を資金使途とする新規の投融資等を行う場合、十分な温室効果ガス排出削減対策がとられているか検証」することを新たに追加した。
機会面では、重要なセクターや関連する次世代技術を明確化。電力、エネルギー、鉄鋼、化学、自動車、海運、航空、不動産セクターでの重点分野や関連する次世代技術(水素、洋上風力、CCS2、SAF3等)にフォーカスすることを決めた。
指標と目標では、「取引先の移行リスクへの対応状況」と「SX人材KPI」を追加。「取引先の移行リスクへの対応状況」では、パリ協定と整合する目標の設定状況を公表。着実に増えていることを示した。2022年度はESGに関し、約1,100社とのエンゲージメントを実施。そのうち移行リスクの高いセクターでは、の取引先約700社で移行リスク対応状況の着実な進展を確認したという。SX人材KPIは、SX人材を定義し、グループ全体での該当人材増を測定していく。
自然資本に関しては、「ネイチャーポジティブ経済への移行に向けたお客さまの取り組みを支援」を明言し、ネイチャーポジティブを考慮していく意思を固めた。具体的な内容はこれから。同様の分野では、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が4月3日、自然資本のリスクと機会について一般的な理解を示した報告書を発効している。今回の開示内容を比較すると、SMFGの方が自然資本への理解は深いと言える。
また、農林中央金庫も3月29日、2050年までの投融資ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットする銀行のイニシアチブ「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」への加盟を発表。投融資カーボンフットプリントを2050年までにネットゼロにすることを表明した。加えて、セクター別中間目標として、電力セクターへの融資で2030年度に「138-165gCO2e/kWh」、電力セクターへの投資で原単位排出量を2019年度比49%減とした。森林での吸収量目標も2030年度に年間900万tとした。
【参照ページ】気候変動への取り組み強化とプログレスの開示について
【参照ページ】農林中央金庫のサステナブル経営の高度化について
【参照ページ】「SMBC グループ 2023 TNFD レポート」の公表について
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