国連責任投資原則(PRI)は12月6日、日本政府に向けた2050年カーボンニュートラル経済実現のための提言書「日本におけるネットゼロの実現」を、日本語と英語の双方で公表した。
同提言書は、日本政府が制定した「GX実現に向けた基本方針」には、パリ協定の目標を達成し、相互に関連するエネルギーと気候の危機に対処するために必要な経済転換をどのように実現するのかを明確にする十分な情報が含まれていないと指摘。また、2035年までに電力部門をカーボンニュートラル化する方法についての戦略も含まれておらず、提案されているエネルギーミックスに占める化石燃料の割合は依然として大きいと厳しく言及した。
また、機関投資家の立場から、現在の市場規範や国際目標に照らして政策戦略を評価するため、現在のエネルギー戦略を支える化石燃料ベースの技術のコスト、実現可能性、排出プロファイルの前提に関する情報を必要としているとコメント。再生可能エネルギーと非化石燃料ベースの技術を優先する実現可能な代替パスウェイが存在する可能性があることを踏まえると、2030年以降のエネルギーミックスの明確化と同様に、優先技術の定量的なパスウェイとターゲットを提示することは、現在のGX基本方針がネットゼロ目標をどのように達成するのかを理解する上で役立つと思われると述べ、今後の指針も提言した。
PRIは今回、経済産業省に対し、GX基本方針を支える現在の前提条件を透明性高く開示し、関係省庁間で調整するようにも提言。2025年に予定されているパリ協定に基づく国別削減目標(NDC)の改訂版の提出や、2024年の第7次エネルギー基本計画策定に向け、パスウェイに関する情報を踏まえて投資家に十分な情報を提供していくべきとした。
個別分野では、GX基本方針で掲げら得ている石炭火力発電へのアンモニア混焼に関し、アンモニア生産のライフサイクル全体の排出量まで含め、どのようなアンモニアを活用するつもりなのか明らかにすべきとした。その上で、アンモニア混焼は、国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオと整合しないと明言。日本が石炭、石油、ガスの上流開発への融資を続けていることも苦言を呈した。GX基本方針に基づく150兆円のファイナンスに、再生可能エネルギーが明確に提案せれていないことにも難色を示した。
GX基本方針で掲げられているカーボンプライシングについても、炭素価格水準が低すぎるため、「2030年の排出削減目標に向けた資本の再配分を十分に推進することはできないだろう」と指摘した。
【参照ページ】Policy briefing: Delivering net zero in Japan
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