
英環境シンクタンクのプラネット・トラッカーは7月11日、機関投資家70社が、ポリマーを生産する石油化学関連企業50社に対し、サーキュラーエコノミーへの転換を実現し、化石燃料への依存を下げ、有害化学物質を排除することを要請した共同声明を発表した。
今回の共同声明では、石油化学関連機企業に対し、5つのアクションを求めた。
- 透明性のある情報開示、戦略の明確化、明確な目標の設定:企業がプラスチックに与える影響を透明性をもって開示し(CDPのプラスチック情報開示等)、ポリマー生産における化石燃料原料を削減し、安全で環境に配慮した持続可能なプラスチックの生産に移行するための明確な戦略と期限付きのロードマップを確立する。
- 製品に含まれるポリマーや懸念される化学物質への対応:企業がポリマーに含まれる有害な化学物質や添加物の生産と使用を特定し、排除することを約束し、その進捗状況を公表する。
- 適切なインフラの構築:企業が、技術開発と適切なインフラ構築のための明確な設備投資計画の策定を通じ、持続可能な原料への移行を支援する。
- ガバナンスの強化:企業が、取締役会レベルで、プラスチック・サステナビリティへのコミットメントを監督し責任を持つ。例えば、循環性に関する専門委員会を取締役会に設置し、経営陣の報酬の一部をサーキュラーエコノミーのコミットメントに関連付ける等。
- プラスチック汚染を終わらせるための野心的な国際的法的拘束力のある措置への支持を公表:企業が、生産と消費を削減するよう設計されたプラスチックの全ライフサイクルにわたる共通の法的拘束力のある措置を提唱することによって、野心的なプラスチック条約のための国際的な取り組みを支持し、野心的な成果をロビー活動で妨害することを控える。
署名した金融機関は、リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)、ピクテ、ノルデア・アセット・マネジメント、Achmeaインベスト・マネジメント、Robeco、アバディーン、ロックフェラー・アセット・マネジメント、MN、LGPS Central、Local Authority Pension Fund Forum(LAPFF)、ストアブランド・アセット・マネジメント等。運用資産合計は6.8兆米ドル(約1,070兆円)。
対象となった50社は、サウジアラムコ、アブダビ国営石油公社、エクソンモービル、ダウ、イネオス、フィリップス66、レプソル、トタルエナジーズ、ライオンデルバゼル、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国石油化工(シノペック)、寧夏宝豊能源、中国中煤能源、ブラスケム、サソール、インド石油公社、リライアンス・インダストリーズ、インドラマ・ベンチャーズ、LG化学、SKイノベーション、ロッテケミカル、ハンファケミカル、台灣塑膠工業(台湾プラスチック)、南亜塑膠工業(南亜プラスチック)、PTT、シャム・セメント・グループ等。日本企業では、三菱ケミカルグループ、住友化学、三井物産(三井化学の可能性もあり)の3社。
今回の共同声明では、プラスチックの生産量は、2060年までに3倍になると予測。プラスチックのライフサイクル全体の温室効果ガス排出量は2倍以上となり、世界の温室効果ガス排出量の4.5%を占めると予想。プラスチックに含まれる1.6万種類の化学物質のうち、毒性テストが実施されたものは5,800種類しかなく、4,000種類以上が有毒であることが判明している。
プラネット・トラッカーは2024年6月、プラスチック汚染問題に関し、化学企業、食品・消費財業界、小売業界がリサイクル促進を解決策として主張する動きを「グリーンウォッシュ」と批判する報告書を発表していた。
【参考】【国際】プラスチック汚染問題で「リサイクル」を解決策にするのはグリーンウォッシュ。シンクタンク(2024年7月6日)
また、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、国選責任投資原則(PRI)、生物多様性のためのファイナンス財団(FfB)、国際プラスチック条約のためのビジネス連合(Business Coalition for A Global Plastics Treaty)、CDP、VBDOは2024年2月、2024年4月に開催されたカナダのオタワで開催されるプラスチック汚染に関する政府間交渉委員会の第4回会合(INC-4)に向け、規制強化を求める共同声明への署名募集を開始していた。
【参考】【国際】プラスチック汚染防止国際条約制定に向け金融機関が共同声明へ。政府に規制強化要求(2024年3月20日)
【参照ページ】Major Investors Sign up To Address Plastic Pollution
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