G20の政府系シンクタンクのネットワーク組織「Climate Transparency」は11月11日、G20諸国の気候変動緩和と気候変動適応、気候ファイナンスの状況を詳細に分析した2019年版レポートを発表した。G20諸国での二酸化炭素排出量は増加傾向にあり、気温上昇を1.5℃に抑えることは技術的には道筋が立っているにもかかわらず、それを後押しする経済政策を打ていないと指摘した。
1次エネルギーに占める化石燃料の割合は、G20全体では82%にものぼる。電力だけでも2018年に、排出量が1.6%増。再生可能エネルギー電力割合は25.5%にまで上がってきているが、遥かに不足しているとした。また経済協力開発機構(OECD)加盟国は2040年までに、その他の国でも2040年までに石炭火力発電を段階的に全廃する必要があると述べた。
交通分野でも、電気自動車(EV)等の割合はG20全体では6%を下回る。それを2050年までには10倍にまで高めなければならないと主張。そのため、2035年までにG20諸国は、ガソリン・ディーゼル車の新車販売を廃止にする必要があるとした。また、不動産分野は、他の分野よりも、大幅に二酸化炭素排出量が増加する傾向にあると危機感を伝えた。全ての新築物件は2020年もしくは2025年までにゼロ・エミッションにしなければならないと提言した。
化石燃料に対する補助金では、天然ガスも含め、廃止すべきと提言。再生可能エネルギーの支援に予算を回さなければならないとした。
今回のレポートでは、G20諸国の国別レポートも出している。日本については、2050年までに二酸化炭素排出量を80%削減する政策をまとめたことは、一定程度評価しつつも、2050年のゼロ・エミッションではないと苦言。また2030年までのエネルギー基本計画で、石炭火力発電所と原子力発電所を新設しようとしている点や、再生可能エネルギー固定価格買取制度の買取価格を減らした点は批判した。電力では、kWh当たりの二酸化炭素排出量は、日本は506gで、G20平均が458gよりはるかに上回っている。また森林カバー率が年々下がっており、土地利用変化(LUC)まで含めた二酸化炭素排出量は年率3%増と減少どころか増加していると厳しく指摘した。
気候変動適応に対しては、目標もアクションも明確でないと言及。原油や天然ガスに対する補助金が多いことも問題視した。
【参照ページ】G20 Brown to Green Report 2019
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